60代の死亡原因の第5位、70代は第4位、90代では第2位となり、死因としてはがんよりも多くなる。
山梨大医学部名誉教授の田村康二氏が言う。
「肺炎は悪化すると死に至る危険な病ですが、自身で抵抗力を上げ、肺炎に感染しそうな場所へ近づかないことで、発症する可能性を下げることができます」
英王立リバプール大学病院の研究者らが、18〜45歳の成人被験者40人に肺炎球菌を塗布し、ぬれた手を鼻に近づけ息を吸い込む、乾いた手を鼻に近づけ息を吸い込む、ぬれた手で鼻をほじる、乾いた手で鼻をほじるのいずれかを行ってもらう実験を行った。
その結果、全グループで感染が生じたが、感染しやすかったのは「鼻をほじる」という行為だった。肺炎球菌の感染経路としては、くしゃみや咳を介した「飛沫感染」が知られていたが、初めて鼻と手が接触するだけで肺炎球菌が広がることが確認されたわけだ。
世界では、毎年130万人以上の幼児が肺炎で亡くなっている。治験は、幼児の行為に警鐘を鳴らす意味もあって行われたが、高齢者も乳幼児同様、感染弱者。年をとったら不用意に鼻をほじらないほうがいい。
「最近は耳垢を取る医師も少ない。耳の穴の開口部から鼓膜までつながる外耳道を保護する役割を果たしており、完全に不要な老廃物ではないんです。耳垢は、外耳道の上皮の動きと、咀嚼やあくびの際の顎の動きなどによって、自然に開口部に移動していく。アメリカの学会などでは、耳の掃除をするなら外側を布で拭く程度にとどめ、耳の中にモノを入れるべきではないとしている」(田村氏)
余計なことはしないことである。