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“視力ゼロ”になる「老眼」の危険シグナル(1)

 加齢により水晶体の弾性が失われて調節力が弱まり、近くのものに焦点を合わせにくくなる状態を「老眼」、正式には「老視」と呼ぶ。
 老眼は老化による自然なこと故心配することはない。しかし、同時に起こる恐ろしい目の病気があるので、紹介しておきたい。

 山下登さん(=仮名・61)は、5年前まで都内で居酒屋を経営していた。店は繁盛し、閉店は11時だったが、途中、夕食を摂り一杯やるため、帰宅するのは毎晩深夜の1時近くになっていた。肉好きの山下さん、ファミレスでサーロインを食べてビールを飲み、締めにご飯ものを食して満腹にしないと寝られないという生活習慣がついていた。
 「野菜嫌いでね。心配になって青汁を飲んでいました。これで大丈夫だと、相変わらずの生活を続けていたんですが、家に来た特定健診のお知らせを見て、受診してみる気になりましてね。血液検査をしたところ、血糖値が160もあって糖尿病だと診断された」(山下さん)

 以来、7年、近所の内科にかかり血糖コントロールをしているが、どうしても酒がやめられない。
 「ステーキはやめ、ご飯も朝、昼、晩、納豆と味噌汁で軽く一膳食べるだけなんですが、ビール2本と焼酎の水割りがやめられない。ウオーキングは朝やっているんですが、血糖値を計るといつも140前後あるんですよ」

 そして、異変が起こったのは1年前のことだ。
 「だんだん、目の前が暗くなるというか、光が感知できなくなってきたんです。それと視力が低下して、1.0だった視力が0.1になってしまった」
 慌てて眼科を受診すると、糖尿病の有無を訊かれた。7年間、糖尿病で内科を受診していると答えると、『糖尿病網膜症』と診断された。

 おまた眼科院長の小俣貴靖氏が説明する。
 「近年、糖尿病患者が著しく増えているんです。同時に、これを放置している人も少なくないため、合併症が目に表れ、駆け込んでくる患者さんもいます。糖尿病の合併症で視力を失う人も決して少なくないのです」

 糖尿病網膜症とはいったいどのような病気なのだろうか。
 「網膜は目の奥にある組織で、カメラのフィルムにあたり、瞳から入った光の明暗や色を感知する働きがあります。網膜症とは、何らかの原因でこの網膜が傷められ、感度が悪くなってしまう病気です。そして、糖尿病の患者さんの約40%に網膜症が起きているといわれます。高血糖の状態が長く続くと、血液の流れが非常に悪くなるため、細かい血管が密集している網膜は非常に影響を受けやすいのです」(同)

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