与野党とも、2世議員の多いこと。芸能界なら“親の七光”という言葉があるが、政界では“地盤、かばん(カネ)、看板”というこの3つがあれば、まあ落選することなく、常に国会議員として“赤じゅうたん”を踏み続けられる。
言い換えると、永田町では世襲が一番楽な方法で赤じゅうたんを踏むことが可能なわけだ。首相・麻生太郎は、父・麻生太賀吉の跡を受けて代議士になった。祖父が元首相の吉田茂であったことは有名。
民主党代表・小沢一郎の父・小沢佐重喜も政治家だったし、幹事長・鳩山由紀夫は祖父・鳩山一郎、父・鳩山威一郎(元外相)ともに政治家だった。衆院議長・河野洋平もやはり父と叔父は政治家であった。だから世襲議員ということになると、与野党とももっと多くいる。
菅のこうした発言は、米大統領・オバマ流にいえば、“チェンジ”かもしれないが、そうなると与党間で物議になるのは目に見えてくる。
防衛相・浜田靖一の父はハマコーと呼ばれる浜田幸一。少子化担当相・小渕優子の父も元首相だし、前首相・福田康夫の父も元首相。そういえばあの元首相・小泉純一郎の父も代議士だったし、後継者には二男を担ぎ出した。
「そうした世襲がまかり通るという日本の政界は根本から考え直すところに来ているのではないか。菅の発言に怒っている世襲議員たちの方がおかしいのではないか。ここらあたりで考え直すべきだ」といった声もあちこちから上がっている。それだけ総選挙の日が迫っているということになる。
民主党の執行部は、「とにかく代表の小沢を連れて全国行脚を続けて、あの西松建設事件での“失墜”を回復したい」と熱心だ。自民党は幹事長・細田博之を中心に「ねじれ現象を早く解消したい」としているが、参院は選挙がないこともあり、「今回の総選挙でこれ以上の当選者を増やし、衆院では民主党ほかの野党にぐうの音も出ないようにしたい」といった願望を持っている。
そのためには世襲議員を切るわけにはいかないのだ。世襲議員のひとりが言う。「世襲議員がたくさん出ればいいわけだ。つまり、それだけ選挙戦が楽になる」と。
今は自民党を離党している渡辺喜美も「父・渡辺美智雄(ミッチー)とは別に考えてほしい」というのは、世襲議員でも代議士として力を出していることをアピールしている。
あの朦朧(もうろう)記者会見をした中川昭一も大臣を棒に振ったとはいえ、父はかつての自民党の中川一郎(故人)だから、立候補すれば当然親の七光ではないが、これまでの実績があるので、赤じゅうたんを踏むであろう。(文中敬称略)