「メジャーのお払い箱が記録なんて、日本野球の恥だよ。破るなら日本人に…」
野村克也氏がそう噛みついた。年間52本はノムさんの記録でもある。来日3年目の助っ人に並ばれたシットにも聞こえるが、実際は違う。
「口調は楽天監督時代のボヤキ節でしたが、王会長の記録が破られる瞬間に期待を膨らませる世論に、一石を投じたかったのだと思います。最下位ヤクルトの消化試合のような中で記録が破られる屈辱、そんな記録に価値はないから、対戦投手は日本球界のプライドを懸けて真剣勝負せよという檄ですよ」(ベテラン記者)
ローズ、カブレラ(ともに55本)、そして、'85年の阪神・バースの54本。歴代助っ人は聖域越え目前で、目に見えない呪縛に苦しめられていた。しかし、今回は少し様相が違う。本誌がプロ野球球団のグッズやその卸売業者を内々にリサーチしたところ、ヤクルトは新記録達成の記念グッズを“仮発注”していたのだ。つまり、ヤクルトはバレンティンの56本目を後方支援するつもりなのである。
「新記録の記念グッズ? 少なくとも、ローズのいた近鉄、カブレラの在籍していた西武はそんな動きは見せませんでした」(プロ野球関係者)
ヤクルトは昨季、観客動員数を減らしている。今シーズンもエース・館山の離脱等で序盤戦から失速し、横浜DeNAの最下位脱出をサポートするありさま。減収必至の状況で、新記録グッズで何とか減収幅を減らそうという魂胆か。
「統一球問題で揺れるシーズンに本塁打の新記録が塗り変えられる方が問題ですよ。加藤コミッショナーの意見を聞いてみたい」(スポーツライター・飯山満氏)
ヤクルト戦は優勝争いよりも盛り上がりそうだ。