さて、そのポン引きという言葉は、古くから使われている単語で、江戸時代の歌舞伎の演目『善悪両面児手柏』の中にも「ポン引きという者があって、親切らしく連れて行き、身ぐるみ剥いだその上に、女郎に売って金を取る、ふてえ奴がいくらもある」というセリフが出てくる。“ポン”は今風な言葉の響きであるが、実は400年以上も昔から使われていた言葉なのである。
そんなポン引きだが、そもそも“ポン”とは何を表しているのだろうか? 諸説あるが有力なのは、ぼんやりした者を意味する“凡”から来ているという説だ。
また、右も左も分からぬぼんやりした者を誘惑し、金を巻き上げてしまうから“凡引き=ぼん引き”で、それがなまってポン引きになったという説もある。
もう一つ有力な説としては、詐欺的な賭博犯のことを表す“盆引き”が変化して、ポン引きといわれるようになったというもの。どちらの説も悪いヤツらから来ている言葉であることは確かで、ポン引きとは大昔から存在していた古典的な詐欺の手口だった。
今も昔も、繁華街でフレンドリーに話しかけてくる人の煩わしさは共通のようだ。