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中国・習近平、北朝鮮・金正恩 2カ国の独裁体制に異変

 北朝鮮には主体(チュチェ)思想があり、デカい北朝鮮と揶揄される中国も、今年1月の党全体会議で“習近平思想”を憲法に明記した。ともに徹底した個人崇拝を進めているが、自国の軍が脅威になっているという共通項も存在する。

 三代続く金王朝の初代、金日成主席を「偉大なる首領様」、金正日総書記を「偉大なる将軍様」、そして金正恩党委員長は「敬愛する元帥様」と呼ぶ。とはいえ、正恩委員長には多くの肩書だけはあるものの実績がない。そこで北朝鮮の建国者であり、偉大なるカリスマである祖父の外観を真似ることで、「偉大なる首領様」の血を引いていることをアピールしようとした。
 まずは特異な髪型。次に身長。シークレットブーツで“ゲタ履き”し、顔も複数回、整形している。
 「こんなハリボテ政権がいつまでも続くわけはありません。国連の経済制裁の影響がどこに表れているかと言えば、党・軍幹部を懐柔するための資金、要するにプレゼントを買い付けるカネが不足しているのです。カネの切れ目が縁の切れ目。褒美がなくなった軍の不満は爆発寸前です」(北朝鮮ウオッチャー)

 軍の不平不満はそれだけではない。非核化交渉を主導するポンペオ米国務長官は、7月上旬の3度目の訪朝時に正恩委員長との会談を模索したが、それはかなわずじまいだった。カウンターパートに該当する元朝鮮人民軍偵察局長の金英哲副委員長が、正恩委員長を遠ざけたからだ。
 「正恩氏と軍部との間に軋轢がある証拠です。対米敵視政策で存在感を維持してきた軍部は、正恩氏の進める融和路線に対し不信感を抱き始めています。ポンペオ長官再訪朝を機に正恩氏は、軍部の不満を代弁し何かと反対する英哲氏の首を、6カ国協議首席代表を務めた李容浩外相にすげ替える予定でしたが、失敗したようですね」(朝鮮半島アナリスト)

 その北朝鮮が泣き付いた中国の習近平国家主席も、自国の人民解放軍が目の上のタンコブになりつつある。
 「腐敗撲滅をうたった中国共産党18回全国代表大会(2012年)以来、“落馬”した軍幹部は90人以上に達しており、史上最大規模です。軍位の売買に伴う金銭のやり取りはもちろんのこと、これまでは許されていた営利活動や企業運営などが固く禁じられました。正常な接待さえできないため、軍内でまともなコミュニケーションが取れなくなっている不満が募っています」(日本在住の中国人ジャーナリスト)

 その軍部に、さらに打撃となるのが中国で最も美しいといわれる人気女優、范冰冰(ファン・ビンビン)の脱税疑惑だ。范は日中韓合作映画『墨攻』('06年)に出演したことで知られ、日本でもウーロン茶のCMで親しまれるようになった。
 この事件は単なる美人女優のスキャンダルではなく、狙いは范が所属する『華誼兄弟』(フアイ・ブラザーズ・メディア=中国の映画配給会社)と北京芸能界から軍部の影響力を排除することにあり、習政権vs軍部の権力闘争の延長線上にあるといわれる。

 ところが、北京の芸能界に関しては、軍部出身で元歌手の彭麗媛(ポン・リーユアン)も影響力を持っている。同氏は言わずと知れた習主席夫人だ。
 「実は習主席と彭夫人には不和説が浮上しています。夫人が姉と慕って家族同然の付き合いのあった軍の歌姫、宋祖英(ソン・ツーイン)が一時、汚職容疑で取り調べを受けたことで表舞台から消え、夫である習主席に強い不満を抱いたからです」(同)
 習政権が范を見せしめに逮捕すれば、『華誼兄弟』を守るべく軍と習政権との間に、決定的な対立が生じるのは必至だ。

 そんな中、7月4日の早朝、上海の女性市民が「私は習近平の独裁専制的な暴政に反対する!」と叫び、『中国の夢』というスローガンが書かれた習主席の看板に墨をかける画像をSNSに投稿した。さらに「私を捕まえるのなら、ここで待っている」と女性は挑発し、実際、希望通り警察に拘束されている。
 「そこに関税による米中貿易戦争の勃発です。おそらくこれは経済史上、未曾有の大戦になるでしょう。米国は単に貿易不均衡を是正するという商いレベルではなく、主導的地位を中国には渡さないという戦略的決意を表明したわけです。結果、中国のインフレは不可避です。アラブの春は、政権への不満より物価の高騰が引き金になって革命が起きています。今回の“上海事件”が蟻の一穴になる可能性もありますよ」(国際ジャーナリスト)

 独裁色を強める習主席に対し「個人崇拝の強制だ」と反発する草の根の動きが各地で起きており、治安当局が厳しく取り締まっている。党の指導部もこうした動きの広がりを懸念しているが、対応に苦慮しているのが現実だ。
 「中国を、少子高齢化社会の日本よりもっと凄まじい現実が襲うのも時間の問題です。中国はすでに5億人の老人社会となっていますが、介護保険はなく、年金基金はとうにパンクしており、老人一揆が目の前に迫っています」(前出・中国人ジャーナリスト)

 習政権は米国との貿易戦争、腐敗撲滅の名のもとに追い詰めすぎた軍との軋轢、そして習独裁に反対する草の根運動と、まさに内憂外患こもごもを抱えている。北朝鮮に構っていられる国内情勢ではないのだ。

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