そんな中、二所ノ関一門による連合稽古が5月9日、東京・江東区の尾車部屋で行われた。横綱・稀勢の里は関脇・琴奨菊(33)ら三役力士との稽古を解禁。10番続いた琴奨菊とのぶつかり合いでは、土俵際の危ない場面もあったが、結果は7勝3敗とまずまず。
ただ、その先場所13日目の日馬富士戦で負った左肩付近のケガは、予想以上に重そうだ。場所前、およそ1カ月に渡り行われた春巡業は完全休場し、治療に専念。5月1日の番付発表会見で久しぶりに姿を見せた稀勢の里は、こう語った。
「この1カ月間は自分の体に向き合えた、充実した1カ月だった。(ケガは)いちにち一日、よくなっている。下半身は100%(出来上がっている)。自分の中では、(夏場所は)面白いんじゃないか、と思っている」
5月初めは部屋で三段目力士を相手に体を慣らし、出稽古で関取衆と胸を合わせた。慎重を期して臨んだ連合稽古の2日間。黒いサポーターの上にテーピングを巻き、患部を固めた姿は8日と同じ。だが、この日は得意の左差しを何度か試した。状態を確認する上で前向きな材料が並び「強い相手とやれたことが収穫」と夏場所に意欲を燃やした。
ただ、ゴールデンウイーク真っ只中の3日、両国国技館で行われた一般公開の稽古総見にも姿を見せなかった。しかも、田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)がこの欠席を前もって相撲協会に連絡することを怠ったために“無断欠席”となり、一時、土俵裏は大騒ぎに。
「(欠席の場合は)もっと早く連絡しないと」
八角理事長(元横綱北勝海から電話でたっぷりお灸をすえられた田子ノ浦親方は、
「僕の不手際。迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
と、小さくなっていた。
冒頭に述べた9日の連合稽古では、一門外の横綱・白鵬(32)が参戦し、周囲を驚かせた。両横綱の前哨戦は実現しなかったが、白鵬は左上腕などに負傷を抱える稀勢の里の状態に目を光らせた。
白鵬は稽古場に姿を現すと、準備運動の前に「キセ!」と後輩横綱を手招き。顔を近づけて、短く言葉を交わした。
白鵬「(相撲は)どうする?」
稀勢の里「下(の力士)とやります」
春場所の前に田子ノ浦部屋で実現したような火花を散らすぶつかり合いは、稀勢の里の“辞退”で実現しなかったが、楽しみは夏場所の本番までとっておくことにしよう。
稀勢の里、双葉山以来の80年ぶりとなる初優勝からの3連覇なるか、最大の注目だ。