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〈目からウロコの健康術〉 歯を失うだけではない怖い病気 「歯周病」の予防・対策法とは?

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提供:週刊実話

 まずは、歯周病と言われる病気から説明しよう。この病気は、40歳を超えると極端に増えるとされ、一般的には、「歯がなくなる病気」と理解する人が増えている。しかし、歯科医師関係者によると、まだまだ予防に対する認識や緊迫感に欠ける人が多いという。

 「特に40歳すぎの高年者になると半数以上がこの病気に罹り、歯を失うと言われる。歯の表面に付着したプラークという磨き残しの歯石に細菌が被膜を形成し、バリアをつくる。そして、その中に歯周病原菌が発生する。主に細菌で構成されるプラークは歯と歯肉の隙間の『歯周ポケット』に増殖するので、歯肉に炎症を起こし、さらに歯を支える骨まで溶かしてしまう。そのため、歯周ポケットが深くなるほど歯を支える骨が失われ、最後は支え切れずに抜歯に至るケースがほとんど。深刻な病気です」

 こう語るのは、昭和大学歯科病院歯周病科の片桐隆彦医師だ。この病気を何とか早期に発見し、歯を存続させる治療をしなければならない。片桐医師は、治療に関してこう説明する。

 「治療に際して、歯周病は口の中全体の歯で同時に進行していくため、すべての歯で歯周ポケットの深さを測るポケット検査や、プラークの付き具合を調べる検査などを行う。その後の治療では、患者自身でプラークを取り除ける練習を指導したりします」

 これは、プラークを形成する細菌が歯肉で引き起こす炎症を減らすのが目的で、“プラークコントロール”と呼ばれる。歯科医はその上で、定期的に診療を行い、歯周ポケットの中に付着しているプラークや歯石を超音派振動機器、あるいは手用器具を用いて取り除く。

 しかし、そうした治療は一旦終了しても、歯周病は再発することが多いため、メンテナンスや「サポーティブ・(ペリオドンタル・)セラピー」と呼ばれる定期的な検査とケアが必要とされる。

 口の中に発症する歯周病菌や虫歯菌などの口腔細菌の危険性が、近年、さらに明らかになってきている。少数でも、自分以外の他の細菌などを巻き込み、病気を引き起こすものを「キースト病原体」というが、その代表が、歯周病菌の一種である「ジンジバリス菌」と呼ばれる。

 しかし、歯周病患者の口腔細菌を調べてみると、ジンジバリス菌だけが特に増殖しているわけではない。他の細菌を爆発的に増殖させ、歯周病をさらに悪化させているのは、このジンジバリス菌が他の菌を巻き込んで暴れていることが原因なのが分かったのだ。

 「例えば、ジンジバリス菌によるリーキーガット(腸管壁浸漏)になると、細菌やウイルスやタンパク質、その他の有害物質が血液中に漏れ出し、それが生活習慣病をはじめとする多くの病気の要因になります。肥満や動脈硬化、血管性の病気(心臓、脳卒中)、糖尿病、肝炎がん、認知症など、いわゆる生活習慣病と言われるものの大もとには、慢性炎症があります。炎症とは、本来は自分以外の“外敵”をやっつけるための防御反応だが、それが何らかの理由で健常部位に起こったり、ずっと続いたりすると、細胞や組織、臓器の機能そのものがダメージを受けていきます」(片桐医師)

 その慢性炎症を起こす大きな原因の1つに「グラム陰性菌の放出する内毒素(細胞の成分)」がある。

 このような理由で、ジンジバリス菌が腸内にやってくると、腸内細菌のバランスが崩れたり、腸に穴を開けるという現象で、リーキーガットになったりと、実に困ったことになるのだ。

 ジンジバリス菌には、タンパク質を別のたんぱく質に変えてしまう酵素(PPAD)があり、それによって性質を変えられたことで免疫細胞のバランスが乱れ、自己免疫疾患を起こすと考えられている。

 こうした作用が脳に働くと、認知症を引き起こすという、驚きのメカニズムも分かってきた。

★原因は“菌”だけではない!?

 また最近の研究では、歯周病と糖尿病が密接に関連していることが判明している。中程度以上の歯周ポケットが口の中全体にある場合、そのポケットの表面積の合計は、手のひらと同じ程度と考えられている。

 歯周ポケットの中身は外から見えないが、手のひらサイズの出血や膿の治療をせずに放置していると、血流に乗った炎症関連の化学物質は、体の中で血糖値を下げるインスリンの働きを邪魔し、効きにくくする。その上、糖尿病を発生させやすく、進行を早める。

 しかし、その一方で歯周病の治療をきちんとすると、血糖コントロールが改善するという研究データも多く報告されている。

 いずれにしても、血液が高血糖になると、毛細血管がもろくなる。そのため、糖尿病でない患者と比較した場合でも、毎日の口の中のケアを怠ると歯肉炎を起こしやすくなるし、そのまま放置すると重度の歯周病になる可能性が高い。

 一般的には、患者自身のブラッシングによるプラークコントロールをしっかり行い、歯科医院で炎症の原因となっている歯石を確実に除く。これで歯肉の炎症をコントロールできれば、インスリンの抵抗性が改善し、血糖コントロールも改善するということが臨床研究でも明らかになった。

 その他に、高齢者(65歳以上)の死亡率第1位の肺炎についても、肺の中から歯周病菌や虫歯菌が見つかっている。専門医によれば、誤嚥性肺炎などの患者の肺から、歯周病菌が高い頻度で見つかっているという。

 なお、歯周病の原因は歯周病菌だけではない。喫煙やストレス、不規則な食生活など、普段の何気ない生活習慣が歯周病につながることもあるから、注意が必要だ。

 最後に「歯周病治療」のまとめとして、前出の片桐医師はこう提言する。

 「歯周病は、我々の口の中で唯一の生活習慣病であり、全身の健康と深く関わっています。互いの症状を悪化させてしまうこの病気は、片方だけ治療したとしてもいい結果は得られません。チーム医療と言われるようになった今、歯科医師、医療機関とともに連携を取り、親身になってくれるかかりつけの病院を持つことが大切なことです」

 年に1、2回の歯のチェックとクリーニング、生活習慣の見直しで歯周病を予防し、快適な生活を送りたいものだ。

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