まず、会田は仕事の隙を見ては、犯行現場をクルマで徘徊しながらターゲットとなる女性の部屋に見当をつける。アパートやマンションばかりを狙い、それも2階以上の階をチェックする。
都内などでは、集合住宅に住んでいる女性のなかには、玄関のドアやベランダの窓に鍵をかけないケースが多い。2階以上の階では、「高い階なら安全なので、鍵をかけなくても大丈夫」と思っている女性が少なくないからだ。
しかし、実際にはマンションの2階や3階などは、子供でもない限りその気になれば侵入するのはそれほど難しいことではない。
実際、電柱やフェンスなどがあれば、それらをよじ登ったりしてベランダに忍び込んで窃盗などの犯行に及ぶケースはいくらでもある。
それに、玄関に鍵がかかっていなければ、そこから意図も簡単に室内に侵入できる。被害にあった女性のなかには、「オートロック式のマンションだったので安心していた」と証言したという。だが、会田はマンションの塀を乗り越えて敷地内に侵入し、玄関から堂々と女性の部屋に入って犯行に及んでいた。オートロック付きだからと安心していた、女性の心理を利用していたというわけである。
さて、会田は女性の後をつけたり、事前に近くを歩いてうろついたりするようなことはしなかった。目をつけたマンションなどの部屋をよく観察し続けていた。
たとえば、女性は下着などを用心してベランダなどには干したりしないが、カーテンをピンク色やパステルカラーにしていたりする。また、わずかな隙間から見える室内に、若い女性が好むキャラクターグッズやポスターが飾っているのが見えることもある。
それらを敏感に察知して、住人がひとり暮らしの若い女性であると見当をつけた上で、会田は卑劣な犯行を行っていたのである。
特徴的だった女性に布袋をかぶせる手口は、「テレビドラマをヒントに考えた」と会田は供述した。最初は市販のものを使用していたが、やがてシーツなどを切って自作するようになった。
あらかじめ下見をし、目隠し用の袋、ビニールテープなどを持参し、会田は極めて計画的に犯行を続けていた。(つづく)