さて、当レポートでは、この統合のシナリオを描いた両社の大株主である住友商事とKDDIの思惑に注目した。あらためて言えば、J:COMの株式は住商が40%強、KDDIが31%強を保有する間柄。一方、JCNはKDDIが95.6%を出資している。
統合に向けた第一段階として住商とKDDIはJ:COMにTOB(株式公開買い付け)を行い、市場に流通する30%弱の株式を約2200億円で完全買収し、折半出資の非上場会社とする。ついでJ:COMがJCNを約1000億円で買収するというシナリオだ。
両社の加入世帯を単純合計すれば393万件となり、NTT系ネット放送の『ひかりTV』を大きく引き離すことになる。加えて情報通信部門に進出して日が浅い住商には、電子商取引や通販事業との相乗効果への期待がある。KDDIまた然り。スマートフォンとケーブルテレビ網、光回線を連動させれば割安な料金体系が導入できる。そうなればNTTやソフトバンクを一気に出し抜けるとの飽くなき野望が透けてくる。
ところが、市場関係者は「両社のお手並み拝見。キツネとタヌキの化かし合いにならなければいいが…」と冷ややか。実際、大フィーバーしたJ:COM株を巡って、投資家が絶句した場面があった。
今回の大統合は、10月20日付『日経新聞』が1面トップで報じたのが発端。これを受け、19日(金曜日)の終値が8万2700円だったJ:COMの株価は、週明けの22日に9万7700円(終値)まで買われ、翌23日には始値、終値とも年初来高値の11万2700円を記録。ストップ高となったものの、以後は値を下げている。市場関係者が喝破する。
「流通する30%弱の株を2200億円で取得するとなれば、TOB価格が11万円余になるのはすぐに計算できる。ところが取得価格=TOB価格が明らかになる前に11万2700円で大量の商いがあり、これで株価が頭打ちになったのは、事前に情報漏えいがあったことを意味する。その恩恵に浴さなかった個人投資家が『こいつらが犯人じゃないか』とばかり、住商やKDDIに疑惑の目を向けたとしても不思議ではありません」
世紀の大合併に早々と冷や水を浴びせた格好だが、その程度で驚いてはいけない。前述したようにJ:COMには住商が40%強、KDDIが31%強を出資している。何を隠そう、これ自体が歴史的“手打ち”の産物なのだ。