なぜ東北の復興が遅れているのか。その最大の理由は、原発事故だ。風評被害がちっとも無くならないから、仮に生産設備が戻ったとしても製品がなかなか売れない。だから、雇用も生まれず、被災者がふるさとに帰ることができないのだ。
原発事故は、十分な対策を怠った東京電力に責任があるが、それ以上に大きな責任を負うべきなのは、原発政策を推進してきた政府であり、それを選んで原発のメリットを受けてきた我々国民だ。だから、少なくとも被災地が完全な復興を遂げるまでは、我々は東北の応援をしていかなければならないのだ。
ただ、いままでの復興策がうまく行かなかったのだから、新しい手を打つべきだろう。私は、大きく三つの方法があると思う。
一つは、東北地方の高速道路無料化だ。これは、すでに実績がある。'11年'12月から実際に行われていたのだ。東北の高速道路は、被災者かどうかにかかわらず、太平洋側の路線は曜日に関係なく全車種無料、日本海側は、ETC搭載の普通車以下に限り土日祝日を無料とした。この措置は大きな効果をあげた。被災者の手助けになっただけでなく、観光客にこの制度が活用されて、交通が大幅に増えたのだ。
ところが、原発事故や震災のため遠隔地に避難している人を除いて、'12年3月末、たった4カ月で打ち切られてしまった。理由は財源不足だった。東北地方の高速道路無料化に要する費用は、4カ月間で250億円、平年ベースでたった750億円だ。20兆円の復興予算全体からみれば微々たる額だ。その程度の予算をなぜ捻出できないのだろうか。
二つ目の東北復興策は首都機能移転だ。国会と中央官庁を福島県に移転する。そうすれば、地方自治体の首都事務所が次々に立地し、企業も集積するから、被災地の復興に大きな貢献をするはずだ。もちろんこれには大きな費用がかかる。首都機能移転審議会の推計だと総額12兆3000億円の費用がかかる。だが、そのうち公費負担は4兆4000億円だ。これくらいの費用は、景気拡大の増収分で十分吸収できるだろう。
三つ目の東北復興策は、消費税率の据え置きだ。来年から上がる消費税を東北地方だけ5%に据え置くのだ。東北地方の対全国GDPシェアは、6.4%だから、東北だけ税率を上げなかったとしても、それによる減収は8400億円にとどまる。消費税の増収効果が13兆円から12兆1600億円に下がるだけで、大した負担ではないのだ。
地域ごとに消費税率を変えたら大変なことになると思われるかもしれない。しかし、大丈夫だ。アメリカには小売売上税があるが、州によって税率は異なっている。たとえばニューヨーク州は5%であるのに対して、アラスカなど5州はゼロだ。それでも、ちゃんと米国経済は回っている。
もちろん、小売売上税の低い州から通販で買ってしまうというような取引は起きていて、同じことが日本で起きることも考えられるが、それは構わない。東北の復興につながるからだ。逆にそれくらい大胆な復興策を打ち出さないと、本当の東北復興は実現できないだろう。