これまでは、感染した家禽(主に食用などのために飼育されるニワトリやウズラなどの鳥類)や、その排泄物、死体、臓器などに濃厚に接触することによって人にも感染するとされていた鳥インフルエンザだが、「飛まつ」で拡散するタイプのウイルスが確認されたのは初めて。専門家は、これが新型インフルエンザのウイルスに変異し、世界的な流行を引き起こす恐れがあると警戒している。
元小樽保健所の所長で、医療ジャーナリストの外岡立人氏に話を聞いた。
「H7N9は中国などで1500人以上に感染したと報告されていますが、私の情報では、昨年3月以降、中国政府の開発したワクチンによって急速に消えていった。今年に入ると、新たな患者は数名いただけだと聞いています。家禽にワクチンを打ったことで、新たなウイルスが発生した可能性もあるが、中国は一切、情報を開示していないので分かりません」
むしろ、別の型に注意すべきだという。
「今年、H5N6鳥インフルウイルスの遺伝子変異株が誕生し、中国では感染した男性が重体となっている。日本国内でも、H5N6は多数のハシブトガラスの異常感染死が兵庫県伊丹市周辺で発生している。日本では、いまだにH5N1型鳥インフルワクチンのみを備蓄しているが、時代錯誤も甚だしい」(同)
厚労省は、来年度からH7N9型のワクチン備蓄に切り替えると発表したが、外岡氏が言うように、常に新たな脅威にさらされているのだ。
専門家たちは、鳥インフルエンザが変異した未知のウイルスのパンデミック(世界的流行)に備え、万能ワクチン開発を進めているが、間に合うのか──。韓国では11月7日に「H7N7」型が、11月12日には「H5N3」型の発症が確認されている。まるでアメーバのように自在に変化するウイルスに対応する手立てはあるのか。