長州さん本人は、’98年に一度は現役を退いてるから、今回は「引退」の言葉を使わないとか言ってるみたいだけど、とにかくまだまだ元気だし、ホントに辞めるのかよって思ってる。
引退試合の対戦相手には藤波さんも入ってるけど、2人ともあの年齢で、あれだけの体を保ててるのは信じられないよ。
プロレスの受け身って、ダメージが蓄積されていくから、みんなどこか壊れていく。脊椎をやったり、椎間板ヘルニアが出てきたり、首や背中に異常が出てくるモンなんだ。
そういう意味でいうと、長州さん、藤波さんはトップクラスの外国人レスラーとガンガンやってきて、俺が考えられないくらいの受け身をとってきている。それで、あの年までやっていけてるっていうのは、体がすごい頑丈というのと、よっぽどカネに困ってたからだろうな(ニヤリ)。
そう考えると、長州さんも、またカネ次第で復帰するんじゃないの? 1年間ぐらい休んだら、大仁田さんみたいに“ボランティア”とか言いながらリングに上がってそうだよな。
まぁ、長州さんが今回リングを去る決心をしたのも、どこかの会社の取締役に迎えられて、カネがもらえる算段がついているらしいよ。
長州さんとは、去年の年末くらいに一緒にバラエティー番組に出て、「叩いて被ってジャンケンポン」対決をしたんだよ。俺の反則負けだったけど(笑)、長州さんがあんな番組に出るっていうのは、時代が変わったというか、もうビックリするよな。
長州さんはもともと体育会系だから、男同士みんなで騒ぐのが好きなタイプなんだよ。長州さんが新日本プロレスで現場監督をしてる頃は、俺はガイジン組に入ってたから、あんまり接点がなかったんだよ。でも、その距離で見てても長州さんは常にピリピリしてたし、周りに対しても厳しかったと思う。いまは団体も背負ってないし、いろいろ開放されたから、心置きなくワイワイやってるんじゃないかな。フリーでプロレスを楽しんで、フトコロも満たされて、心置きなくリングを離れる決意をしたってところだろうな。
その長州さんの引退興行で、武藤敬司選手が復帰するんだよな。両膝を人工関節にする大手術をして、リングに戻ってくる。
武藤さんとたまにジムで一緒になるんだけど、手術して1カ月ぐらいのときに手術跡を見せてもらったら、両膝にバックリと傷が入ってたよ。
いくら天才・武藤敬司といえども、あれだけの手術してリングに上がるのは、さすがに恐怖心があると思うよ。
それでも武藤さんはリングに上がりたいんだろうな。俺にポロッと「試合がないとすることがない。ジムから帰ったら、家で座ってずっとドラマ見てるだけなんだよ」ってこぼしてたよ。
だから武藤さんにとって、現役でいることが生きがいなんだよ。まぁ、年に1回でもリングに上がってれば現役レスラーとして、タニマチから金が降りるんだろうから、うらやましいよ(笑)。俺なんてもう体を動かせないから、いろんな所で口を動かして稼ぐしかないからな。
********************************************
蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。