A:よく噛まないで食べると血糖値が上がるのは研究結果も出ており本当です。
時間をかけてよく噛んで食べると、食事による熱エネルギー生産やグルコースの代謝に影響し、食後の高血糖や肥満を改善することは、過去の研究で確認されていました。
また、よく噛むと、食欲を抑えるGLP-1などの消化管ホルモンの分泌も促され、噛まないで食べるのと比べ、少ない食事の量で満腹感が得られます。
●工夫次第で、よく噛む癖は身につく
ではどうすれば、強く噛んで食べること、よく噛んで食べることが身につくでしょうか。
強く噛むためには、歯肉が丈夫であることが前提です。歯に問題がある人は、まずはその治療をしましょう。そして、強く噛んで食べるトレーニングとしては、ガムを噛むことが役立ちます。その場合、必ず左右の歯で均等に噛むようにしましょう。
とはいえ、歯の本数が少なく、よく噛まないことが癖になっている人にとってはなかなか難しい問題です。まず基本的なこととして、歯の治療を行い、口全体で食べられるようにし、飲食のさい、常によく噛んで食べることを意識することが必要でしょう。
よく噛むためには、一口分を、口の中に入れたら、右の奥で10回、左の奥で10回、噛むようにします。15回ずつならなおよいですが、課題としての回数としては多すぎるでしょう。そして、口の中のものを飲み込んでから、次の一口を口に入れるようにしたいもの。
よく噛むためには、よく噛むことによって美味しさがより味わえる食材を選ぶことも大事です。現代の料理は、軟らかく、口に入れただけでおいしいと感じるものが多すぎます。卵料理、ハンバーグ、カレーライスなどはその代表的なもの。よく噛む必要がありません。
一方、玄米、フランスパン、イカ焼き、ゴボウやレンコン、乾燥の豆類、ナッツ類などは、よく噛んで食べるほどに美味しさが出てくる食材や料理です。
以上のような食事の仕方を心がけると、きっとよく噛んで食べるようになれますが、気長に取り組みたいものです。
渡辺秀司氏(とつかグリーン歯科医院院長、漢方歯科医学研究所所長)
神奈川歯科大学卒。同大学研修医を経て、横浜市でとつかグリーン歯科医院を開設。歯学博士。歯科領域に漢方を取り入れ、天然素材を配合したうがい薬や歯磨き剤を開発。独自な歯周病治療で名高い。