実は水面下で、J:COMの経営権をめぐりKDDIと住友商事が火花散る主導権争いを繰り広げているのだ。CATV業界トップのジュピターテレコム(J:COM)が、2位のジャパンケーブルネット(JCN)を買収することをこのほど決定。これが今回の新たな火種となった。
では、具体的にはどういう確執か。
現在、J:COMには住友商事が40%、KDDIが30%出資している。この微妙な出資比率の差が対立の元凶になっているのだ。
J:COMの加入世帯は307万件。'11年12月期の売り上げが3696億円で経常利益は685億円と、他の同業者にとっては魅力的に映っているのも否定できない。社員数は1万1536人。
片やJCNは、'01年に富士通、東電、セコム、丸紅などが共同で設立。'07年にKDDIが約96%買い増しし、オーナーとなった。加入世帯はJ:COMの約4分の1に当たる86万件。'12年3月期決算は売り上げ905億円、経常利益が97億円、社員数は2460人。この手の企業としては中規模だ。
今回仕掛けたのはKDDIの方とされる。ライバルのソフトバンクがコンテンツ制作やスマホ向けにドラマを流す会社を次々に設立、会員を増やし、KDDIに差をつけているからだ。
もともとKDDIと住友商事は不仲だった。
'10年1月にKDDIが約3500億円を投じてJ:COMの株を大量に取得すると発表したことがある。これに同じ大株主である住商は慌てた。対抗策として、同年4月にTOB(株式公開買い付け)を実施しJ:COMの筆頭にのし上がる。双方は同年6月に“提携”という形で合意するが、しっくりいっていなかったのだ。
そして今回の件が発生する。今後、KDDIと住商の2社が統合へ向け株式市場に残る30%を買い集める。そして両社は統合し、J:COMは上場廃止するというが、計画通りいくかどうか首をかしげる関係者は少なくない。
ただし、映画やテレビドラマなどのコンテンツを配信するNTT系『ひかりTV』('12年3月時点200万件)のシェアを潰す狙いは不変。弱肉強食の業界ゆえ、さらなる波乱が予想される。