事件は平成14年に遡る。北朝鮮から230キロに及ぶ覚せい剤を貨物船で運び、日本海に投下。それを小型船で回収し、島根県安来港から密輸したという事件だった。
警視庁は、この一連の密輸行為に関わったとする覚せい剤取締法違反の容疑で松葉会系の元組長Fを逮捕。さらに、事件の共犯として元極東会系組長・宮田克彦被告と韓国籍の禹(ウ)時允被告の2人も平成18年に逮捕していた。
翌19年、F元組長には無期懲役などの判決が東京地裁から下され、控訴していたが、事件は急展開する。
「F元組長は病気の悪化により、東京高裁の許可を受けて千葉県鎌ケ谷市内の病院に入院しました。ところが平成20年2月、病院から突然失踪。一時は『証拠隠滅のために消されたのではないか』との憶測まで流れたんです。F元組長は、のちに別の病院で死亡していたことが判明しましたが、残る2人の被告を起訴した証拠がF元組長の証言を中心としていたため、事件の行方が注目されていたんです」(全国紙記者)
しかし、平成20年5月、東京地裁(角田正紀裁判長)はF元組長の供述の信用性を認め、宮田被告と禹被告に対して冒頭のような一審判決を下していたのだ。
「一部捜査関係者の間では、F元組長が『事件は全部自分一人でやった』との趣旨の遺書を残していたという話もある。これが本当なら、今回の判決に影響した可能性もありますね」(同)
暴力団組員に対する判決では少々“無理筋”でも有罪になることが多く、「ヤクザ裁判」なる言葉まであるほどだが…。
「注目の判決だっただけに、裁判所には住吉会の長久保征夫理事長をはじめとする関東組織の大物の姿もありましたよ」(暴力団事情に詳しいジャーナリスト)
今回の判断が、今後の「ヤクザ裁判」に与える影響も少なくなさそうだ。