報告書は、番組やニュースで取り上げてきた複数の放送を対象に、その経緯を調査。「結果として事実と異なる内容を放送したことを真摯に受け止め、反省しなければいけない」との見解を示した。佐村河内氏の聴力については、「耳が聞こえるかも知れないと思うようなカットはワンカットもなかった」(すべての撮影素材を見た映像編集担当者)とした。しかし、宮城県石巻市での公演後、佐村河内氏がピアニストに対して演奏についての感想を求めたり、テレビのスピーカーに指をあて「音楽の強弱が分かる」といって説明した場面があった。別の映像スタッフの一人は「不思議に思った」と証言。しかし、このスタッフは疑問を持ちながらも「特別な感性を持っている人には分かるのかな」と、それ以上は疑わなかったという。
『週刊文春』の告白記事が出る直前に、『NHKスペシャル』を担当した契約ディレクターが週刊文春から取材を受けた。そのディレクターは佐村河内氏に「ゴーストライターがいるのは本当か?」と確認のメールを送ったところ、「自分はシロ」と疑惑を否定する返信があったそうだ。しかし、週刊文春が発売される4日前の2014年2月2日に、一転して「別の人物に作曲させていた」というメールが届いたのだ。その際に佐村河内氏は「償いきれないほどの裏切りをした」とディレクターに謝罪。だがNHKは、ディレクターが佐村河内氏の嘘を知っていたかということについて、「本人は全面的に否定している。撮影で行動をともにしたスタッフからのヒヤリングでも、そのような事実は認められなかった」とした。
「企画段階で音楽家としての評価を確かめたところ、音楽界での評価は分かれているということでしたが、『本人が作曲していないのでは?』と疑わせる情報はなかった」と、報告書で見解をまとめたNHK。佐村河内氏の嘘に踊らされたマスコミが多かったことは事実だが、その先陣を切ったNHKは何を言っても言い訳にしかならない。サングラスを外して長髪を切り、殊勝な態度で謝罪会見をした佐村河内氏も最後は開き直り。調子に乗せた方も乗せられた方も反省はしていない。