「今さらではありますが、松井は将来のエース候補。そのポジションは『先発』ですが、二軍では『中継ぎ』をやらされていましたからね」(スポーツ紙記者)
二軍首脳陣が勝手に育成プランを変更させたのではない。これも、二軍降格の原因となった“ノーコン病克服”の一環だという。
「ノーコンを克服するには投げ込みの練習量を増やすしかない。でも、松井の場合は重症で、先発ローテーションを守って登板間隔が空くと、また元に戻ってしまう。中継ぎに転向させ、毎日投げさせるしかない」(関係者)
荒療治だが、理に適った育成法である。
この一時的な中継ぎ転向で、高校球界を席巻した“キレのあるストレート”と“消えるスライダー”は蘇りつつある。だが、佐藤監督代行が求めている戦力は中継ぎ投手ではない。現在エース格の則本昂大に次ぐ、勝ち星の計算できる先発投手だ。今後、松井を先発で使っていくかどうかだが、その可能性は低いという。
「当面は無理だと思う。スタミナ面にも不安があり、先発タイプのライナー・クルーズ(29=前所属アストロズ3A)を緊急獲得したということは、今季は松井をアテにできないと見たからでしょう」(前出・関係者)
松井の将来性は疑うまでもないが、プロ1年目の今季、「厳しい洗礼を受ける」と考える関係者は少なくなかった。それも、松井が活躍した神奈川県の高校野球界で予想されていた。
「高校生相手ならどんなスライダーでも空振りしてくれますが、プロはストライクゾーンから外れていると、その軌道をしっかり見極めてきます。フィールディング(守備)やクイック投球ができないので、即戦力ではないと…」(強豪校指導者の1人)
神奈川県の高校出身でプロ1年目から結果を出した投手といえば、松坂大輔、涌井秀章が思い出される。奇しくも、両投手とも横浜高校の出身。その将来性に太鼓判を押された後は、バント処理などの守備やクイック投球の練習に多くを割き、徹底的に鍛え上げられたという。高校指導者のなかには、プロに進む選手と、そうではない選手の練習メニューを変える者も少なくない。松井は2年冬に相当量の走り込みをさせられたが、プロ入りを想定した“実戦的練習”には時間を割いてこなかったのだ。では、今回の一軍昇格は何だったのか? 練習だけなら、二軍にいた方が時間も多く割けるが…。
「二軍に長くいると、精神面でスレてしまうので」(前出・関係者)
楽天の大久保博元二軍監督(47)は、西武時代に菊池雄星をパシリにした、しないで、一悶着を起こしている。松井に関してその手の報告はされていないが、佐藤監督代行は「自分の目の届くところで育てたい」と懸念したのが、今回の一軍復帰の真相では…。