実は、VWとの提携('09年)は鈴木会長の専権事項として進められ、両社でさまざまなプロジェクトを立ち上げることで合意したからこそ、VWが2000億円の大枚を投入した経緯がある。当時、VWは出資比率を20%超に高めたかったが、経営権奪取を警戒するスズキが抵抗し微妙な比率に収まった。
「これで調停が不調に終われば、鈴木会長への風当たりは強まる。もしスズキが求めた提携解消が認められた場合でも、厄介な問題が浮上する。VWの取得価格に比べて現在のスズキ株は大幅に安くなっており、VWが要求するであろう2000億円での全株買い取りに応じれば、今度はスズキが株主代表訴訟を起こされかねないのです」(関係者)
VW問題は規定路線とされる御曹司、俊宏副社長への社長継承人事にも影を落とす。“超ワンマン”の異名を取る父親とは対照的に、俊宏副社長は線が細く「リーダーとしては力量不足」と陰口されている。
「そのため会長はVWとの問題が決着するまで社長交代に踏み切れず、ズルズルと時間が経過した。お陰で社内には、鈴木会長親子に対する不満が渦巻いているんです」(スズキOB)
昨年夏、インド子会社の暴動で幹部1人が死亡し、100人の負傷者が出た。このインド進出にGOサインを出したのも、鈴木ワンマン会長だった。OBが続ける。
「インド事業はスズキの稼ぎ頭に育ったとはいえ、約700億円を投じて新たな工場の建設に着手したと思ったら住民の反対運動が勃発した。政治家が扇動しているとの話もあり、スズキの命取りになりかねません」
瓦解は目前か。