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上場以来最高の黒字見込み マクドナルド驚異のV字回復3つの理由

 一時、日本撤退もありうるのでは、との噂も飛んだほどドン底状態に陥っていた日本マクドナルドが、驚異のV字回復をしている。'17年12月期の連結決算では、上場以来最高の200億円の黒字。背景に何があったのか。

 まずは、最悪な状態だった時期のマクドナルドについて見てみよう。
 「2009年頃から、総じてのマンネリ化で徐々に売り上げが減少し、苦戦していたところ、直撃したのが上海での悲劇でした。材料調達先の一つだった中国企業が、'14年暮れ頃、期限切れ肉を使用したり、床に落ちた肉を素手で製品コースに放り込む衝撃映像が、地元テレビ局のスクープで発覚したのです」(経営アナリスト)
 加えて'15年前半には、国内で商品に歯や金属片混入の告発が相次いでイメージがさらに悪化。子どもを持つ親たちを中心に、一斉にマクドナルドをボイコットし始めた。そのため'15年末決算では、年間349億円もの最終赤字を出してしまった。

 その上海の悲劇に直面したのは、就任間もないサラ・カサノバ社長。
 「当時はまだ日本人の心や商法をうまく掴めていなかったカサノバ氏が、上海の被害者だと上から目線で会見を行ったことで、ますます客足が遠のいたのです」(同)

 この上から目線は、アメリカ本社の姿勢でもあった。だが、被害に遭ったのはアメリカの消費者ではなく、日本の消費者。それを、ちゃぶ台を引っ繰り返すかのごとく逆ギレした姿勢は、傲慢不遜と取られた。しかし、カサノバ社長はそこから転換の速さを見せる。
 「猛省したというカサノバ氏は、日本人の心を掴むために学び直し、それを確実にスピーディーに実行した。その数は数十にも及ぶ改革、改善だが、特に柱となる3つの対応が功を奏し、客足が徐々に回復し始めたのです」(同)

 その一つは、何と言っても消費者が一番気になる「食の安全」。これを確実に目で確かめられるように透明化した。
 「それまで一部仕入先だった中国を、タイなどに変えたのですが、それを消費者も確認できるよう、ホームページ上で、すべて見られるようにし、包み紙などにQRコードを設け、安全のPR活動を行ったんです」(外食産業関係者)

 しかし、それだけでは一度離れた客足は戻らない。そこで2つ目として殿様商法を止めた。
 「他社とのコラボを率先して行った。その中には、'16年夏に大ヒットした『ポケモンGO』とのコラボが大成功を収め、これをきっかけに各店舗が活性化したと言っても過言ではありません」(同)

 他にも他のコンビニや食品メーカーと一緒に様々な企画を次々と立ち上げ、その都度、そこそこのヒットを飛ばしている。
 「マクドナルドはそれまで、他社とのコラボ企画などは到底考えらない企業だった。しかし、世間の拒絶現象にようやく目が覚め、消費者目線に立ち始めた。そして、消費者との関係を双方向に切り替えたわけです」(業界誌記者)

 3つ目としては、思い切った不採算店舗の徹底削減が挙げられる。
 「'14年の上海での悲劇前、3891あった店舗を、不採算店舗を中心にどんどん閉鎖した。現在は、ピーク時より約1000店舗減の2902店舗となっている」(同)
 この店舗数削減とともに、スタッフの再教育を徹底。カサノバ社長自ら週に一度は現場を訪れ、スタッフ、主婦や女子高生、さらにはお年寄りたちから日本人客の生の声を聞き、それを経営に取り込む努力をしてきた。これらの積み重ねが、まさに奇跡のV字回復につながったのだ。

 しかし、前出の経営アナリストは、こう言う。
 「実は、ハンバーガーは他の外食産業が伸び悩む中で足腰が強く、これからさらに伸びそうなジャンルで、新規参入も含めて活発化しているのです」

 例えば、『牛角』を運営するレインズインターナショナルが、全株を取得し展開する『フレッシュネスバーガー』や、ニューヨーク生まれの『シェイクシャック』も人気を集めている。また、居酒屋を展開しているユナイテッド&コレクティブが始めた『the 3rd burger』も好調だ。ここに、既存大手のモスフードサービスの『モスバーガー』、ウェンデーズ・ジャパンが展開する『ファーストキッチン』なども加わり、群雄割拠の時代に突入している。
 「マクドナルドも、さらに魅力ある味の創出と経営努力をしなければ、再び急降下しかねない状況なのです。そのため'18年は、さらなるコラボと、再び新規店開設を積極的に仕掛けるなど、攻めの構えを見せています」(前出・業界誌記者)

 新旧入り乱れてのバーガー戦争。新年は一挙にエスカレートする気配を見せている。

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