「ほとんどの人が、母親と接触の多い乳幼児期に感染します。しかし、全く症状が出ない、もしくは軽い風邪の症状が出る程度で済んでしまうため、大半の人は感染したことに気が付かないまま大人になります。一度感染すれば免疫ができるので、それ以降は発症することはほぼありません」(都内の小児科医)
『キス病』は、ヘルペスウイルスの仲間に属するエプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)によって引き起こされるもの。EBウイルスは人の唾液を介して感染し、一度感染すると体内に一生とどまる。以前の日本では、20歳までにほぼ100%の人がEBウイルスに感染済みとされてきた。だからこそ『キス病』はめったに見られない病気だったという。
ところが、最近は“大人”の間でこの病気が増加しているらしい。前出の小児科医が続けて語る。
「大きな原因は、子供を取り囲む環境が変わったことでしょう。触れ合って遊ばなくなった裏返しといいますか、ウイルスが蔓延する機会が減ったということですね。また、市販の離乳食が豊富になり、親が食べ物を咀嚼して柔らかくしてから食べさせるようなことをしなくなったのも、幼児期に感染しない要因の一つでしょう。とにかく、回し飲みや口移しなどで、大人になって感染すると厄介な病気で、肝機能障害を併発することが知られています。特別な治療法もなく安静が必要で、しゃべっているだけで飛沫感染することもありますから、誰でも感染する可能性があるのです」