「香川が移籍したマンチェスター・ユナイテッドがニューヨーク証券取引所に近く新規上場するように、サッカーではビッグクラブの株式上場は世界的な流れなのです。一方、米大リーグでは共同オーナーシステムがトレンド。中心となる人物や企業が出資者を集めて球団を所有し、最大出資者が筆頭オーナーに就く。たとえ赤字が出ても何年か先に高額で売却すれば利益をゲットできる。その点、日本のプロ野球の球団所有には非上場会社の縛りがある。各球団とも親会社を持ち、子会社である球団の株式を保有する親会社が年間20〜30億円の赤字分を広告、宣伝費で補てんしている。外国籍企業の球団所有も認められていない。そこで三木谷氏らはグロバール化する現状に沿うようにプロ野球のシステムを世界標準にスイッチしようとしている。そのためには経済界出身の気鋭のコミッショナーのもとで野球協約を見直す必要があったのです」
これまでならこのような球界改革に対しては、渡辺恒雄巨人球団会長らセ・リーグのオーナー陣が「嫌なら出ていけ、残った球団で1リーグだ」でジ・エンドだったが、今のセにはこれまでのような神通力はない。
切り札ともいえる阪神-巨人戦のテレビ視聴率が7.6%(7月8日)まで落ち込むなど、巨人と阪神にオンブにダッコだった球界勢力図は大きく塗り替わりつつあるからだ。
「パが救世主として期待しているのが米大リーグとのジョイントです」
と話すのは、極東担当のMLBの某スカウト氏。
「本来、駐米大使を務めた加藤氏をコミッショナーに招いたのは、その人脈を生かしてMLBとの交流を推進する狙いがあったからです。日本シリーズチャンピオンが米国のワールドシリーズ王者と世界一を競うという遠大な計画でした。しかし、2期4年たってもそれが進まない。そこでパ側は見切りをつけ、ダルビッシュ、松坂、イチロー、松井が所属するア・リーグに狙いを定めてプレーオフ参加を画策しているのです。西地区、中地区、東地区、極東(パ優勝)によるリーグ優勝決定戦が実現すれば、パの人気が高まり、興行的にも、株式上場による資金調達にも有利に運ぶ。こうやってセ側を揺さぶることで、三木谷氏は球界のリーダーシップを握ろうという作戦なのでしょう。百歩譲ってセが乗ってくれば、それはそれでいい。プロ野球全体が活性化するわけですから」(大手広告代理店)
巨人の傀儡ともいえる加藤コミッショナーの再選が決まったことで元暴力団員らに1億円を供与した原監督の野球協約違反疑惑は一段落の運びだが、10月1日のNPBの一般社団法人化に課題を残したのも事実。
球界の改革、そして世代交代は動き出した。