深刻なのは「タワーマンション」の住民だ。営業マンは地下の免震装置をウリに販売しており、資産価値が下がってはたまらないと「マンション名の公表は控えてほしい」という訴えが相次いでいる。
「KYBの補償問題は深刻です。2015年に免震偽装が発覚した『東洋ゴム工業』は、同年12月期からの特別損失は累計で1400億円を超えています。同じ年に『旭化成』は子会社で杭打ち工事のデータ改ざんが見つかり、16年3月期に不正の調査費用など14億円を特損として計上。KYBの補償規模も、相当なものになるでしょうね」(国交省担当記者)
ところで今回問題となったのは「免震・制震装置」だが、「耐震装置」とどう違うのか。
「ざっくり言うと、『免震・制振』は建物の揺れを抑える装置で、『耐震』は倒壊しない強度を保てる装置。1981年に改定された建築基準法では、震度6強から7に達する大規模地震で倒壊・崩壊しないことが求められています」(同・記者)
だが、耐震基準を満たしていても、大地震で亀裂が入るなど建物に被害が出たり、大きな揺れで家具やオフィス機器が倒れてケガをすることもある。そのため、「免震」として地下に装置を設け、振動が建物に伝わりにくくし、「制振」として各階に装置を配置して、風や地震の力を吸収し、揺れを低減させている。
果たして不正な「免震・制震装置」を使用していたKYBは、どれほど傾いてしまうのだろうか。