風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、いわゆる風営法では、客にダンスをさせ飲食物を提供する店は、公安委員会の営業許可が必要。営業時間は制限され、本来かき入れ時の深夜帯に営業できないことになっている。しかし悪質な例を除き、当局の黙認状態が長年続いていた。
ところが今年4月、大阪・キタの超有名クラブ『NOON』に20人以上の大阪府警捜査員がなだれ込み、経営者ら8人が風営法違反(無許可営業)容疑で逮捕されたのを機に、芸術関係者らの間で「このままでは音楽文化が衰退する」との懸念が広がりはじめた。音楽家の坂本龍一氏らが、風営法の規制対象から『ダンス』を削除する法改正を求めて、署名活動を始めるまでに至ったのだ。
この“風”に乗る形で、摘発された経営者の男性(49)は先ごろ、「同法は憲法で保障された『幸福追求権』に違反する」として無罪を主張、裁判に打って出たのだ。
「摘発の要因は、『騒音など近隣からの苦情のほか、昨年、東京・渋谷のライブハウスであった放火予備事件を受け、大勢が集まる場所では大量殺人の危険があると考えた』と説明しています。しかし、それなら映画館など際限なく取り締まり対象が広がることになる。そもそも風営法は1948年、売春婦がダンサーとして客をとっていた時代に、風紀を正す目的で制定されたもの。ビリヤードや社交ダンスなど、後に規制対象から外れた業種があることからもわかるように、同法は規定があいまいで恣意的な取り締まりにつながりやすく、拡大解釈次第でライブハウスやバーさえも摘発対象になり得る。その意味では暴排条例と構造的に似ています」(司法関係者)
今年から“ダンス”は義務教育で必須科目となっている。それなのに、大人になったらクラブで踊るのはダメというのは、やはりこの国はワケがわからない…。