時には微妙にリアルな『メロン熊』や頭に段ボールを被っただけの『やなな』等のイレギュラーなキャラが混じる事もあるが、全体的に言えるのがなんともゆるく時にキモカワイイ系のデザインである事があるだろう。
近年になって注目され始めたこの“ゆるキャラ”。その元祖とも言える奇妙なUMAが江戸時代に存在していた!? という驚愕の報告例がある。
掲載された写真画像を見て戴きたい。『悪病除けの人獣絵』と題してあり、人の顔をした奇妙な動物を描いたものらしいのだが、この人獣が何とも言えずゆるい雰囲気を放っているのだ。うつろな目とやたら大きな鼻をしたリアルめの人の顔に反し、獣の体はぬいぐるみのような適当すぎる造形。絵師が途中でやる気を無くしたのだろうか。
こちらの絵は明治期に活躍したジャーナリスト、宮武外骨が著作内で紹介しているもの。江戸時代は文政年間に描かれた絵の写しで、当時富山の薬売りが「この4〜5年のうちに悪い病気が流行するが、この絵を描いて飾っておけば病気の害からは逃れられる」と触れ回っていたものだそうだ。
科学的知識や病気に対する明確な治療法がなかった昔は、魔除けの絵を飾って病気にならないように祈る、という対処法がよく取られた。はしかや疱瘡(天然痘)除けに金太郎や桃太郎、鍾馗様などを赤一色で描いたものや、災厄除けや魔除けに怪物の絵を描いて飾る、というものが多かった。特に魔除けの方は白澤や件といった人面牛身の瑞獣をモチーフにしたものが多かった。
この絵もその一つだと思われるのだが…恐らく下手な人や容姿をよく知らない人が描いたためにこのような結果になってしまったのだろうか。類似の『縁起の良い化け物を描いているはずなのに絵が微妙でゆるキャラ化してしまっている』ケースに『アマビエ』などの妖怪が報告されている。
(山口敏太郎事務所/画像は宮武外骨 著作の挿絵より)