Q1:今季のピッチングに対する評価は?
A:高い。
味方の得点援護に恵まれないため、勝敗は6勝5敗(6月23日時点)だが、表にある通り(※本誌参照)、防御率、奪三振数、投球イニング数、QS数など主要な指標は軒並みトップクラスで、トミージョン手術によるブランクの間にコール・ハメルズに奪われていた「エースの座」を完全に取り戻した。
今季、特に光るのは、ピンチになるほど制球が冴えるため、走者を出しても得点されなくなったことだ。得点圏に走者がいる場面でヒットを許す確率は1割3分7厘という低さで、これはア・リーグの先発投手でベストの数字だ。苦手にしていた中4日登板も苦にしなくなり、今季は中4日で投げた8試合の防御率が2.79。それに対し中5日以上で投げた7試合の防御率は4.04と、中4日の方がずっといい数字を出している。
Q2:7月末のトレードの可能性は?
A:低くなった。
今季のレンジャーズは序盤、打線が機能せず、開幕から5週間が経過した5月8日時点で13勝20敗と大きく負け越していた。そのため早い段階で優勝の望みがなくなり、7月に再建モードに入ると思われた。
そのような場合、メジャーの球団は、7月末のトレード期限までに契約最終年の主力選手を優勝争いするチームにトレードし、見返りに1、2年後に主力選手に成長しそうなマイナーのホープを獲得する。そのため、契約最終年の大物、ダルビッシュの7月末トレード説が浮上した。
しかし、レ軍は5月中旬に10連勝して息を吹き返し、現在はポストシーズン進出の望みが十分ある。そのため、7月末トレードの可能性は低くなった。
ただ、その可能性がゼロになったわけではない。7月に入って投打の主力に故障者が続出するような事態になれば、勝率5割を大きく割り込むことになる。そうするとダルのトレード説が再燃するだろう。
Q3:今季中にレンジャーズとの再契約が発表される可能性は?
A:恐らくない。
レンジャーズはダルビッシュとの再契約に前向きだし、ダルの方も残留を希望している。しかし、ダニエルズGMは30歳を過ぎた投手と5年以上の長期契約をしないというポリシーなので、6年以上の長期契約を望むダル側との隔たりは大きい。よって、シーズン終了までにその溝が埋まる可能性は低いと見る向きが多い。
Q4:FAになった場合の評価は?
A:7年2億ドル(220億円)程度と予測される。
レンジャーズとの溝が埋まらない場合は、チームを出てFAになり新たな契約先を探すことになる。
ダルビッシュは今オフ、FA市場の目玉になると見られているため、過去にFA市場で最高評価を受けたプライス(レッドソックス)やシャーザー(ナショナルズ)と同レベルの契約(7年2億ドル規模)になると予測する向きが多い。
日本人投手で契約規模が一番大きいのは田中将大の7年1億5500万ドル(170億円)なので、多少低めの契約になっても、ダルは日本人で最もリッチな選手になる可能性が高い。
Q5:今後の去就で最も可能性が高いシナリオは?
A:いったんFAになったあと、レンジャーズと再契約するシナリオだ。
その場合は5年1億6000万ドル(176億円)〜6年1億8000万ドル(198億円)で話がまとまるだろう。レンジャーズ側とダルビッシュ側の金額の隔たりがなかなか埋まらない場合は、他球団と契約することになる。好条件を提示してくる可能性があるのはカブス、ヤンキース、アストロズ、エンジェルスあたりだ。
Q6:大谷翔平がダルビッシュの再契約の妨げになる可能性は?
A:1%もない。
レンジャーズはダルビッシュとの再契約に前向きだが、それ以上に、大谷翔平獲得に並々ならぬ意欲を見せている。5月にはダニエルズGM自身が来日し、鎌ヶ谷でリハビリ中の大谷を視察している。 「大谷翔平がダルの再契約の妨げになる」と最初にぶち上げたのは、ヤフースポーツの名物記者ジェフ・パッサンだが、この記事はレ軍が大谷獲得合戦に深くかかわることになりそうだ、という前提のもとに書かれている。
しかし、大谷にはすでに意中の球団があると言われており、レ軍は相手にされない可能性が高い。レ軍が大谷獲得を優先すると結果的にダルが割を食うという予測は、話としては面白いが、現実に起きる可能性は極めて低い。
スポーツジャーナリスト・友成那智(ともなり・なち)
今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2017」(廣済堂出版)が発売中。