「マエケンが緒方監督から開幕投手に指名されました。帰ってきた黒田をいい意味で意識しており、現エースとしての意地を見せようと気合いが入っています」(前出・スポーツ紙記者)
黒田博樹の帰還は、阪神にとって最大の脅威となるかもしれない。個人成績では福留孝介が日米通算3割強と相性の良さを見せているが、チーム全体ではむしろ悪い。『黒田対トラ打線』は打率2割6分8厘。通算アーチ15。この15本塁打はリーグワーストである(本誌計算)。チーム関係者によれば、黒田は「けん制球のクイックターンが速い」という。そのため、ヒットで走者を置いても一塁ベースにくぎ付けにされてしまい、得点できないのだ。
阪神の機動力は“無い”に等しい。昨季の総盗塁数「55」は12球団ワースト。ライバル巨人の半分くらいしか走っていない。けん制のうまい黒田の帰還は、細かい部分でもトラを脅かしているようだ。
「新井貴浩の広島復帰も厄介ですよ。好機で凡打を繰り返していましたが、チームの中枢にいた選手です。内野守備のサイン、藤浪、能見、メッセンジャーなど主力投手の情報も広島ベンチに流れるはずです」(前出・在阪記者)
和田豊監督は関西系メディアのインタビューで、昨秋の『阪神・巨人連合対MLB』を指し、「巨人選手は試合中に声が出ていた。そういうチーム一丸の姿勢がウチには少し足りない」と虎ナインのおとなしさも嘆いていた。
その巨人も、新主将・坂本勇人が腰痛で出遅れた。坂本は「やってしまったものは仕方ない」と切り換えていたが、リーグ4連覇に向け、いきなり水を差された格好だ。
「昨季は交流戦で大きく勝ち越し、中日をお客さんにしたから優勝できたようなもの。対広島は13勝10敗1分けですが、シーズン序盤は負け越していました。マエケン、大瀬良にてこずっていたところに黒田の帰還。ベテランの多い巨人が今季もスロースタートなら、投手陣を再整備した広島に追い付けないかもしれません」(ベテラン記者)
原辰徳監督がチームの命運を託したのは、やはり阿部慎之助だ。一塁コンバートの真意は、これまでの『主将・4番・守備の要』の3役の負担を減らすためで、阿部が打たなければ、たとえチームが勝っても盛り上がらない状況を見てきたからである。
正捕手の座は2年目の小林誠司とFA加入の相川亮二で争うが、投手陣に対する阿部の影響はむしろ強まりそうだ。
「阿部はブルペン捕手を務めながら、打者として必要な投球への目線を養ってきました。一塁手に専念する今季からはブルペン入りする必要はなくなったのですが、『バッターボックスに立って投球を見たい』と言っています」(担当記者)
菅野智之はハイペースで調整している。だが、年長の杉内俊哉、内海哲也らはそれほどでもない。小林、相川も阿部の目線が気になるだろう。阿部のブルペン訪問が余計な重圧を掛けなければいいのだが…。
「新人の戸根千明、高木勇人が一軍スタートとなりましたが、原監督のゴリ押しだったんです。DeNAの中畑監督は、高校時代『ハマのゴジラ(横浜高校)』として注目を浴びていた'09年のドラ1筒香嘉智を一人前に成長させましたが、原監督は母校の東海大相模高校出身で松井氏の『55』を一時引き継いだ大田泰示を、後一歩のところまで引き上げただけ。自分が手塩にかけて育てた選手も作りたいようです」(同)
巨人は今さらながら、マエケンや藤浪晋太郎など速球派投手に対応するため160キロに設定した打撃マシンを導入したという。補強惨敗の阪神ともども、これではポジティブな話題満載の緒方カープがぶっちぎる予感しかしない。