とは、高知県幡多郡黒潮町で民宿を営む男性。
内閣府の有識者検討会議で南海トラフ大地震が見直され、M9.1の新想定に加え、最大34.4メートルの津波が最速2分で襲うという予測が立てられた。その恐怖にさらされているのが、黒潮町の住民だ。
黒潮町は高知県西部に位置し、太平洋に面する海岸線が約25キロ。冒頭の男性の自宅には裏山があるというが、高台は少なく人口約1万3000人の80%が沿岸部に住む。
町でタクシー会社に勤める男性も嘆く。
「これまで南海地震で想定される津波の高さは8メートルだった。それに合わせて町では津波避難タワーを建設したのですが、30メートルを超える津波が来たらひとたまりもない。しかも地震が起こってから2分? とても逃げ切れないよ」
黒潮町では東日本大震災後、海岸近くにあった町役場を海抜22メートルの高台に新築移転することを決めたばかりだが、この高台でも巨大津波にのまれてしまうのだ。
「南海トラフでM9の巨大地震が発生するのは、数100年に一度。過去の例では、慶長大地震(1605年)で東海、東南海、南海と同時に3つの大地震が発生、1707年に富士山が宝永の大爆発を起こした1カ月前にも3連動の巨大地震が起きた。そう考えると、今度東海地震が発生した際も、3連動の可能性が高く、大津波が押し寄せる可能性は高い」(サイエンスライター)
黒潮町の大西勝也町長は苦渋の表情で、「高台への集団移転を含めて、あらゆる手段を検討したい」と語った。
果たして対策は間に合うのか。