さて、今回は1997年の第14回優勝馬タイキマーシャル(父ダンスオブライフ、美浦・藤沢和雄厩舎)にスポットを当てた。
「気持ちが前向きすぎて折り合いに課題があった」と葛西助手は振り返ったが、この時は好位2番手でスムーズにレースを運んだ。最後はオースミタイクーン、キングオブダイヤと3頭がハナ面をそろえてゴールになだれ込んだ。そして、長い写真判定の末、軍配はタイキマーシャルに上がった。まさに、薄氷を踏む(クビ+ハナ差)勝利だった。それゆえ、陣営の喜びはまた格別のものがあった。
とりわけ、葛西助手は胸を熱くした。第一印象で「重賞のひとつやふたつは勝てると思った」タイキマーシャルのこれが嬉しい初重賞制覇だったからだ。GI馬がキラ星のごとくいる藤沢和厩舎の中では“大部屋”の一頭といえたが、「とにかく真面目な馬だった」とと思い入れが強かった。
デビューは遅く3歳の夏。惜しくも初戦は2着に終わったが、2戦目は0秒7差をつける圧勝劇。ちなみに、全成績を通してダートで勝ち星を挙げたのはこのときが最初で最後となった。重賞はエプソムCの1勝だけだが、7歳までタフに活躍し、“無事是名馬”を地で行った。
記録に残るレースは少ないが、葛西助手の記憶にはGI馬と肩を並べて残っている。現役最後のレースは99年の京阪杯で16着。引退後は乗馬として第二の人生をスタートした。
通算成績は27戦8勝(うち重賞はエプソムC)