史上初の無観客試合の制裁が処されたのは、3月23日の対清水戦。人種差別は国際サッカー連盟(FIFA)が最も嫌うことであり、先ごろは差別撲滅に向けた5カ年の行動計画もまとめた。しかし、新たな対立図式が懸念されている。当該サポーターたちを損害賠償で訴える準備が進められているというのだ。
「浦和の淵田敬三社長が『訴訟を検討中。トータルで考えて判断したい』と発言しています。浦和は問題の横断幕を掲げたサポーターを呼び、事情聴取しました。Jリーグ本部には彼らをかばう内容で報告書を出したものの、村井満チェアマンはそれを突き返しました。ホンネでは、浦和は当該サポーターたちの説明に納得していません」(ベテラン記者)
浦和は「損害は計算中」と各メディアに答えたが、「1億円超」との見通しも示唆していた。試合に掲示されるはずだった企業広告にしてもそうだ。浦和の説明では「今のところ、企業側から賠償の話は出ていない」というが、関係者はこう語る。
「前例がないので、広告出資した企業側も出方をうかがっているだけ。常識的に見れば、今後、広告出資した試合が無観客となった場合、クラブが賠償する条文が契約書に加えられるでしょう。浦和が広告出資した企業と賠償について話し合うのはこれからですが、訴訟になれば浦和は被害者となり、追加制裁が軽減されるかもしれません」
“社会的常識”では、当該サポーターの釈明は通用しない。浦和は再発防止に向け努力しているが、その後、警備員を増員するなど余計な出費もかさんでいる。
もうひと波乱では収まりそうにない。