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政府紙幣発行 効果に疑問

 自民党が提言した政府紙幣の発行による景気対策について、麻生太郎首相が前向きな姿勢を示した。古くから政権維持の目的で新しい通貨を発行するのは権力の常だった。しかし、通貨の価値が暴落し、激しいインフレを招くのも歴史が証明しているところ。定額給付金で無駄遣いをした後は新紙幣の発行。麻生首相はどこまで国民を愚弄するのか。

 政府紙幣発行プランは自民党の菅義偉選対副委員長らが中心となって進めてきたもの。麻生首相は「100年に1回と言われる金融危機。ありとあらゆることを考えてもいい。非常に興味を持っている」と述べ、田村耕太郎参院議員を会長に党内に議員連盟を発足させた。若手、中堅議員にはおおむね好評だという。
 そのひとり山本一太参院議員は「景気刺激効果がある」と高く評価。自民党を離党した渡辺喜美衆院議員も「25兆円発行すれば、現状のデフレと円高を是正し、1〜2%の物価上昇と1ドル120円の円安が期待できる」と麻生首相に提言した。
 しかし、政府紙幣発行は本当に景気対策に効果があるのか。

 政治評論家の本澤二郎氏が指摘する。
 「そんなことをしたら、本来の円の価値がどんどん下落し、日本社会の価値が下がります。日本の税収は毎年40兆円。それなのに90兆円の予算を編成し、足りない部分は国債を発行している。そのトータルが今や1000兆円です。孫の代にまで借金を押し付けている。今でこそ、アメリカの混乱で円高になっているが、こういう状況の中で新たに紙幣を発行したら、猛烈なインフレが起こり、海外での円の価値もなくなって日本人は海外旅行にすら行けなくなるでしょう」
 政府発行紙幣で思い出されるのが戦前の軍票である。軍用手形とも呼ばれ、戦時中、占領地で食糧などを調達し戦争遂行のため軍が発行。日本の政府機関に持ち込めば円と交換してくれたが、軍票の乱発で占領地では激しいインフレが起こったという。
 海外に目を向けると、新紙幣の発行で国内が天文学的なインフレになっているのがアフリカのジンバブエ。同国は昨年7月、年率2億3100万%の物価上昇を記録した。それというのも、経済政策の失敗で政府が4度に渡って新紙幣を発行したからだ。パン1斤が実に25億ジンバブエドル(1米ドル)。今も超インフレは止まらない。
 「日本は“中曽根バブル”のツケを今も払わされている。ゼロ金利政策をとり、どんどん紙幣を刷って市場に流したのは中曽根康弘元首相です。ダブついた金で不動産や株が次々と買われ、バブル経済が起こったが、結局1990年にはじけて1500兆円ともいわれる金が消えてしまった。その借金を国民はずっと背負わされているのです」(本澤氏)
 政府紙幣の発行について財務省は「法改正する必要がある。偽造防止コストがかかる。印刷についても時間がかかる」と慎重な構えを見せ、日銀も「政府発行紙幣と同じ意味を持つ量的緩和政策を2001年3月から5年間実施したが、効果があったとは思えない」と懐疑的だ。
 「こういうナンセンスなアイデアが飛び出すのも、次の選挙で自民党が敗北するのが確実だからです」(本澤氏)
 2兆円の定額給付金の支給の次は政府紙幣の発行…。麻生首相はいったい国民をどこへ連れて行こうとしているのか。

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