「カンパニーは白物家電、環境ソリューション、AV機器、自動車・産業用機器の4つです。ところが先に決まったそれぞれのトップは津賀社長の“お友達”ばかり。気心の知れた面々で津賀内閣を支えるといえば聞こえはいいですが、社内には中村派の面々が残っている。くみしないまでも、津賀社長に距離を置く幹部クラスだって少なくない。そんな面々が津賀社長の長期政権にどこまで手を貸すかは怪しい限りです」
社長、会長時代の中村氏は周囲を側近で固めたとして後に非難された。たとえ津賀社長にその轍だけは踏むまいとの覚悟があったところで、4カンパニーのトップに“津賀社長派”と目される面々を起用した以上、はた目には“長期政権シフト”としか映らない。
しかし、今のパナソニックは人事抗争にウツツを抜かしている場合ではない。かつて同社は“松下銀行”と呼ばれるほど磐石な財務を誇った。ところが50%を超えていた自己資本比率は今年3月期末で20%を下回る見通し。財務内容が悪化したのに伴い、格付け会社のフィッチは同社の格付けを「投機的水準」に格下げ、ムーディーズは辛くも投資適格ランクを与えているが、もう一歩で投機的、すなわちクズ債権の扱いだ。今後の資金調達には、相応の高いコストが必要になる。
「格付け会社がパナソニックに不信感を募らせているだけじゃない。メディアはなぜか大きく報道しなかったのですが、津賀社長は去年秋の会見で『フリーキャッシュフローを毎年度2000億円以上創出する』と悲壮な決意を表明した。これは、本業で稼ぐキャッシュから投資で使うキャッシュを差し引いた現ナマを、2000億円以上生み出さなければ金庫がカラになりかねないということで、当時から津賀社長の危機感はハンパなレベルではなかったのです」(金融情報筋)
メディアの“配慮”で忍び寄る「松下銀行の危機」は、ほとんど世間の関心を集めなかったが、実は冒頭に述べた時ならぬ株価フィーバーにも「同社のファンを自負する証券マンの“仕掛け”があった」と、東京・兜町の関係者は指摘する。
「3月の決算期末が目前に迫ってきたという点がミソです。少しでも業績を上げたい投資ファンドや証券会社が、話題作りにシャカリキになるのは当たり前。そこで出遅れ感のある電機メーカーに白羽の矢を立てた。そうでなければ、ソニーに続いて無配転落のパナソニックの株価があれだけ急騰するわけがない。今、シャープ株が目先筋の注目を集めているのも、この流れに沿ってのことです」
果たして、“バブル株”か否か−−。