この強さをなんと形容したらいいのだろう。怪物?化け物?次元の違うヴァーミリアンの強さを目の当たりにして、誰もがド肝を抜かれた。
人気を分け合った3着ワイルドワンダーの久保田師は、「正攻法で勝ちに行って通用する相手じゃなかった。(潔く)あの強さを称えたい」と脱帽だ。
これほどのパフォーマンスを披露したヴァーミリアンだったが、戦前に“怪情報”が流れた。根拠は川崎記念を脚部不安で取り消したことによるもの。しかし、武豊騎手は経験上、馬耳東風と聞き流す余裕があった。「本命馬はいろいろいわれますからね。気にしませんでした(笑)」
そして、結果は有無をいわさぬ横綱相撲。ケチのつけようがない圧勝劇で、国内最強馬を強烈にアピールしたのだった。
「今日はスタートに一番気を使った」と振り返る武豊。しかし、課題は難なくクリアした。「すごくいいスタートが切れた。もともと競馬の上手な馬だし、道中は堂々と走っていました」と感心しきりだ。一方、石坂師も、「一戦ごとに馬が自信を持って競馬に臨んでいることが、手に取るように感じられる」と指摘する。
今日のパフォーマンスで「世界が楽しみになった」。ジョッキーとトレーナーは口をそろえた。昨年のドバイワールドC(4着)で世界の壁を痛感した2人が、リベンジに向けて確かな手応えをつかんだ瞬間でもあった。
フェブラリーSは世界に向けて、格好の物差しにもなった。石坂師は「プラス7kgの数字を見て気持ち太いと思ったが、逆にこれで勝てばすごいと思った。もっと良くなりますよ」とさらなるステップアップを確信した。
「千六に一抹の不安があったが、勝てたことで日本最強馬を実感した」さあ、次は世界の猛者が相手だ。無論、距離が2000mに延びるドバイWC(GI、UAE、ナド・アルシバ競馬場、3月29日)は条件的に今回よりも競馬はしやすくなる。石坂師、そして、武豊騎手は胸を張って海外へ飛翔する。