現在のロシアのもとになったキエフ公国が誕生したのは、9世紀のこと。10世紀に入るとウラジミール大公は、キエフ公国をより強靭な国家にするため、宗教を導入することにした。当時の世界は、宗教を基軸に回っていた。戦争も、国と国の協定も、宗教を判断基準に取り決められていたのである。「では、キエフ公国の国教は何にしよう」と考えたウラジミール大公が、候補に挙げたのがイスラム教とキリスト教だった。
「地理的にイスラム教の方が得策」と考えたウラジミール大公だったが、ある戒律を知って断念する。それが“飲酒厳禁”だったのである。何度も言うが、ロシア人はアルコールが大好きだ。それはキエフ公国の時代も同じで、とにかく酒がないと生きていけない人々が住む国だった。そんな国で“飲酒厳禁”などと言ったものなら、国民の反抗を招くことは目に見えている。ゆえにウラジミール大公は、アルコールに寛容なキリスト教を国教にすることに決めたのである。
もしロシア人が酒好きでなければ、イスラム教を信仰していた可能性が高く、その後の世界情勢は大きく異なっていたことだろう。ああ、“おそロシアおそロシア”。