国際ジャーナリストが背景を解説する。
「トランプは北朝鮮カードを駆使して11月の中間選挙を有利に運ぼうとしたのですが、朝鮮半島の現状を知るにつれ、短期的に解決できるテーマではないことをようやく理解したようです。しかもトランプは国内外の課題を解決できないとの批判を受けて、今年初めのような政治的な勢いがなくなってきています。正恩はそこを見透かし、9月9日の建国70年を祝う軍事パレードでは、米本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイルを登場させず、演説もしませんでした。これらを理由に“北朝鮮が武力挑発から対話に路線転換した”との見方も出ていますが、これは朝鮮戦争の終戦宣言にこぎ着けるため、米国を刺激しない戦術である可能性が高い。北はあくまで『核保有国』としての地位を国際社会に認めさせ、金一族体制の永遠なる存続を図るのが狙いだからです」
金委員長は、そのための手をすでに打っている。中国との関係正常化だ。
先の軍事パレードでは、習近平国家主席の特使として訪朝した栗戦書全人代常務委員長と並んでヒナ壇に立ち、2人が手を握って観衆に応える場面を演出した。
「朝鮮半島の政情は北朝鮮有利に傾いてきています。9月5日に平壌を訪れた韓国の訪朝団は、正恩から『核廃棄は2021年1月のトランプの第1期任期まで』という期限表明を受け、非核化への意思に揺るぎがないことが分かったと大歓迎していますが、これにはウラがあります」(同)
金委員長が「トランプの再選は難しくなったと判断した」からだというのだ。
「正恩は、今後1年間で勝負をつけると息巻いている。その間に日朝会談を開き、日米関係にクサビを打ち込めば、非核化というテーマは棚上げされると計算しているのです」(前出・国際ジャーナリスト)
やはりこの男、世界の指導者の誰よりもしたたかだ。