紛糾のタネは様々あるが、根幹は親方たちが持っている105プラス一代年寄2の計107もある年寄名跡の取り扱いだ。
年寄名跡の入手経路は、養子となって譲渡されたり自己資金で購入したりと、実に多種多彩。はっきりしていることは、年寄名跡が親方たちの何ものにも代えがたい貴重な個人財産ということだ。これが「公益性に反する」ということで公益財団法人の移行にひっかかり、これまでの話し合いで相撲協会が一括管理することで決着している。つまり、これまで高額で取引されてきた虎の子の年寄名跡を相撲協会がすべて引き取って管理し、親方たちが勝手に売買できなくするはずだった。
「問題はその引き取り方法。今年1月に文科省に提出した組織改革の行程表には『特別功労金』という名目で事実上、買い上げることが盛り込まれ、前回までの話し合いで一律3000万円という金額も提示されていました。しかし、6月12日に開かれた公益法人制度改革対策委員会で、この買い上げ方式を全面撤回。功労金なしで引き取ることが決まり、3000万円の支払いを止めにしたのです」(相撲記者)
どうしていま頃になってこんなに大きく方向転換したのか。
「理由は2つ。1つは107人に一律3000万円も支払うとなると総額32億円余で、財政が急激に悪化している相撲協会の支出能力を超えるということ。もう1つは、年寄名跡の後継者指名問題。所有者は後継者を指名し、それが妥当かどうか、協会内に新設する資格審査会で検討することになったんですが、指名する見返りに水面下で金銭授受が行われれば、なんのための改革かわからなくなる。その罰則をどうするかなど、19日にも理事会や評議員会が相次いで開かれましたが、まだ煮詰めなければいけないことは多いのです」(担当記者)
大相撲界刷新の先行きはいつまでたっても見えない。