大枚を投入してEV車に進出した以上、そう簡単にHV車に鞍替えできるわけがない。一方、ガソリン車よりも走行距離が長く、空気を汚さないことから「究極の自動車」といわれる燃料電池車に至っては、米国のコンサルタント会社が2025年に世界市場の5%、'30年には10%のシェアを確保するとの試算を発表しているとはいえ、これまた新規参入には膨大な資金が必要だ。
そこで関係者が熱い視線を送るのが、安倍政権によるエコカー振興に名を借りたEV車のテコ入れ策。ここで注目すべきは、今や往年の輝きを失った日本の電機産業がその恩恵に浴することだ。
前述のパナソニック=トヨタの他、NECは日産と、ボーイング787で騒がれたGSユアサはホンダや三菱自動車と、それぞれリチウムイオン電池の合弁会社を設立している。
それだけではない。世界に先駆けてこのリチウムイオン電池を商品化したソニーは、政府系ファンドである産業革新機構の主導で、日産=NECの合弁会社への合流を画策している。
「産業革新機構=政府がシャシャリ出た理由は、ソニー救済だけじゃない。エコカー振興と、不振の“日の丸電機”をダブルで再建させるのが本当の狙いです。現に革新機構はソニー、日立、東芝の中小型液晶事業を統合したジャパンディスプレイの設立を主導した実績がある。ルネサスエレクトロニクス、エルピーダなどの“ゾンビ企業”の延命策に手を貸したのも革新機構です。安倍政権が近く発表するエコカー戦略も、革新機構=国民の血税の影を排除しなければ、思わぬ反発を買いかねません」(前出の経済記者)
エコカーの最大市場である中国では、簡易な技術を駆使したドイツのフォルクスワーゲンが日の丸連合に立ちはだかり、インド、ブラジルなど他の新興国でも存在感を増している。これに対し、一挙両得を狙った安倍政権の二兎作戦がどう奏功するか−−。
結果はすぐに出る。