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『バクマン。』第16巻、人気漫画の連載引き伸ばしは是か非か

 大場つぐみと小畑健が『週刊少年ジャンプ』(集英社)に連載中の漫画『バクマン。』第16巻が、1月4日に発売された。この巻ではライバルの人気漫画家・新妻エイジの天才ぶりが発揮された。
 エイジは当初から主人公のライバル的設定であったが、大きく突き抜けた存在であり、ライバルというよりも導き手のようになっていた。最近は他の漫画家のエピソードが多く、存在感が弱まっていた面は否めない。それが、この巻では天才肌を見せ付けた。

 『バクマン。』の魅力の一つは内幕物のリアリティである。主人公達が実在の漫画雑誌である『週刊少年ジャンプ』で連載し、読者アンケートなど雑誌の舞台裏が明かされる。主人公は恥ずかしいほど真っ直ぐで熱い人物であるが、業界のダークな側面も描かれる。
 この巻では雑誌の看板となった人気漫画は漫画家の意思でも簡単には終わらせられないという商業主義の現実が描かれる。編集部の商業主義によって描きたいものが描けない、不本意ながら描かされているという不満は決して小さな声ではない。漫画家もブログなどで出版社を通さずに自分の意見を表明できるようになり、これまでは表に出なかった声も明らかになっている。
 その中で商業漫画雑誌の最右翼に位置する『週刊少年ジャンプ』掲載作品が、自らが理想とする形で作品を終わらせようとチャレンジする漫画家を登場させたことは、商業主義への不満の声を一定程度は代弁することになる。編集部の連載引き延ばし姿勢を作中で問題提起した著者の勇気を称えたい。

 一方で『バクマン。』も少年ジャンプ編集部に認められた作品である。編集部の立場も代弁している。本来ならば漫画家と編集部という対立軸になるはずであるが、バクマンでは漫画家同士の対決になった。ジャンプの漫画として成り立たせる話題運びの巧みさは巧妙である。
 そして自分の作品を自分の意思で終わらせようとする漫画家は自らに厳しいハードルを課している。しかも、編集部に認められた条件を自発的に厳しくした。現実の漫画家にとっては不可能に近い条件である。それくらいのことをしなければ、漫画家が自分の意思を貫くことは許されないという編集部にとって都合の良い結論にもなってしまった。
 結局のところ、天才的な漫画家の凄さを見せつけたものの、この巻では商業主義的な動機による連載引き延ばしが漫画にとって是か非かという問題は残された。この問題は現在『週刊少年ジャンプ』で連載中のエピソードである亜城木夢叶の新作で深められている。そこでも対決相手はエイジである。
 直前の第15巻は新人漫画家・七峰透との対決がメインであったが、この第15巻発売時の『週刊少年ジャンプ』連載漫画では七峰が再登場していた。ジャンプ連載とコミックスの連動という点でも味わい深い。

(林田力)

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