ここ栃木県だけでなく、7月から9月にかけて、しかるべき国有地から最終処分場の候補地を選ぶとの方針は、前述の8県すべてに打ち出される予定。環境省が示したロードマップに従うと、栃木県に対しては既に、「立地候補地に関する資料および現地調査の協力」「立地候補地に関する知見の提供」「立地候補地の地元市町村への説明」など3点の協力要請を行っており、さらに候補地選定後の平成25年9月までには、最終処分場の基本設計ならびに工事費算定などが完了し、工事発注の段階に達していることになっている。
続いて平成25年度末をめどに工事用道路の整備や候補地の造成工事に着手。この後、本体工事、付帯工事などが順次進められ、約2年後の平成26年7月から、いよいよ放射性廃棄物の受け入れおよび処理事業開始となる。
しかし、どのようなタイプの最終処分場にするかは、まだ確定してない。それ以前に、「候補地がどこになるかも、まだ決まってない」(栃木県廃棄物対策課)状態なのだという。栃木県内における指定廃棄物の量は「4月中旬の段階で約8000トン弱」(福田知事)に達し、今後さらに増加するものと予想されており、あまり時間はない。
那須町と大田原市の共同ゴミ処理施設である『広域クリーンセンター大田原』を訪ねた。
「現在、指定廃棄物のうち8000ベクレル/キログラムを超えている分量は約189トンです。1つの袋に800キロから900キロ入るフレコンバックと呼んでいる袋状の容器に密封し、立ち入り禁止の場所で保管しています。指定廃棄物は飛灰といって、汚染廃棄物を焼却した際に排出されてフィルターに付着した黒い粒状の灰のことです」(同センターの担当者)
8000ベクレル/キログラムを下回る指定廃棄物は、一般廃棄物と同じ方法で焼却、埋め立てを行っているという。その根拠は、昨年6月に原子力安全委員会がまとめた『東京電力福島第一原発事故の影響を受けた廃棄物の処分等に関する安全確保の当面の考え方』によるものだ。8000ベクレル/キログラム以下であれば、一般廃棄物と同じやり方で処分しても、被曝線量は年間1ミリシーベルトを下回り、周辺住民に対する健康上の問題はないとしている。
ともあれ、栃木県の国有地といえば那須や日光を連想する。日光には世界遺産に登録された東照宮や陽明門のほか華厳の滝、中禅寺湖などがあり、大正天皇が皇太子時代に静養された日光田母沢御用邸跡もある。一方、那須御用邸は平成19年に敷地の約半分の570ヘクタールが、宮内庁から環境省に移管され日光国立公園の一部となっている。
「国有地を最終処分場の候補地として選定する」ということは、これらの場所のどこかで建設を進めるということだ。
県内に発生した廃棄物を県内で処理する話とはいえ、場所が場所だけに、地元住民ならずとも不安な思いは拭い切れない。