こう明かすのは、自民党長老の一人だ。
しかし、今回の菅氏のゴリ押しで党内対立が相当深刻になりつつあるという。というのも、「菅氏は調子に乗りすぎだ」との声が党内から上がり始め、増税を強く迫っていた麻生財務相は面目丸潰れ。周囲に「菅だけは絶対許さん」と息巻いているためだ。
なぜ、「菅官房長官の仕切り」と言われるのか。その理由を、冒頭の長老が三つ挙げる。
(1)菅氏は、アベノミクスが完全に行き詰まっているのを冷静に見極めていた。また予定通り増税をすれば、世界では日本だけがリーマンショック時のような事態になるのは火を見るより明らかと判断していた。
(2)公明党は表向き、来春の消費税増税を否定していなかったが、創価学会内には婦人部を中心に反対の声が非常に強かった。菅氏は創価学会の佐藤浩副会長とのホットラインを持つため、そこから反対のシグナルが送られた。
(3)おおさか維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)、橋下徹法律政策顧問(前大阪市長)と菅氏は、安倍首相より関係が深い。おおさか維新は消費税値上げに猛反対で、この“影の与党”は今後、首相の悲願である改憲論を進めるにあたり敵に回したくない。
いずれにしても、一方の麻生氏にしてみればメンツ潰しがこれで3度目なだけに、怒りが収まらないのは当然の話。
「1度目は2014年の増税延期。この時は安倍首相から懇願され延期を飲んだ。が、その際も裏では菅官房長官の差し金があったといいます」(官邸記者)
2度目は昨年暮れの軽減税率騒動。創価学会婦人部を中心に軽減税率の品目拡大を突き付けられ、それを渋る財務省と自民党に対し菅氏は、創価学会の参院選非協力をチラつかせて谷垣幹事長を篭絡。この時、麻生氏は菅氏に「やりすぎだ」と警告の電話をしたほどだという。
そして今回だ。
「財務省無視でG7を利用し“リーマンショック前夜”と煽る資料をせっせと作り増税再延期を画策したのは、菅氏と首相秘書官の今井尚哉氏」(財務官僚)
さらに「再延期するなら衆院を解散して問うのがスジ」と唱えた麻生氏に対し、菅氏は「公明党、創価学会はダブル選挙に反対。再延期は参院選で問えばいい」とトドメを刺した。