1月31日未明、茨城県神栖市の空き地で、日本薬科大学1年の菊池捺未さん(当時18)が遺体となって埋められているのが見つかったのだ。
事件を捜査していた警視庁は同日、同市に住む土木会社作業員・廣瀬晃一容疑者(35)を死体遺棄容疑で逮捕するとともに、殺人容疑でも取り調べを始めた。
「遺体に着衣はなく、2カ月以上経っていたので腐敗が進んでいましたが、司法解剖の結果、窒息死を推定させる痕跡が残っていました」(捜査関係者)
廣瀬容疑者は、「被害者とはネットの掲示板やオンラインゲームで知り合った」と供述しているが、この事件には多くの謎がある。
まず、携帯電話の位置情報や駅の防犯カメラなどの捜査で明らかになっている菊池さんの事件当日(昨年11月20日)の足取りを追ってみよう。
午前中に東京・文京区にある日本薬科大学お茶の水キャンパスで授業を受けた菊池さんは、自宅(葛飾区西亀有)近くのJR綾瀬駅から常磐線に乗り、約100キロ離れた茨城県の鹿島神宮駅で下車。午後5時40分すぎに駅前でタクシーに乗車し、約7キロ離れた神栖市内のコンビニ近くでタクシーを降りている。
「コンビニに車で迎えに来た廣瀬は、菊池さんに目隠しをして自宅アパートまで連れてきたと供述しています。その後、再び目隠しをした状態で車に乗せ、アパートから離れた場所で降ろしたというのです」(全国紙社会部記者)
ここで疑問なのは、菊池さんが目隠しを受け入れている点だ。旧知の間柄の男女でも、目隠しをされてどこかに連れて行かれそうになったら断るはずだ。
まして、廣瀬容疑者はあの風貌である。初対面で、あんな男に目隠しを要求されたら、成人男性でも逃げ出すのではないか。
「廣瀬は、ネット上で落ち武者だとか、ハリウッド映画のバケモノのプレデターだと恐れられているほどですから、菊池さんがすんなり目隠しを受け入れたとは信じがたい。ただ、近隣住民の証言などからは、廣瀬がすべて嘘をついているとも言えないんです」(同)
午後8時頃、菊池さんは廣瀬容疑者の自宅近くで、近隣住民にアパートの場所を聞いているのだ。
「その際、『場所が分からなくなった』と尋ねているし、別の目撃者は『東京から来たが、お金がなくて帰れない』と泣いていたと証言しています。これらの話を総合すると、廣瀬容疑者の供述と符号する」(同)
廣瀬容疑者は、次のようにも供述しているという。
「最初に家に来たあと、(実際には存在しないオンラインゲームの代金立て替え名目で)コンビニで金を下ろさせ、2度目に来たときはこの金を巡ってトラブルになった。菊池さんに『あなたのことを(SNSで)拡散します』と言われ、携帯電話を取り上げようとしたら抵抗され、首を絞めた」
こうした状況を踏まえ、オンラインゲームに詳しいライターが推測する。
「ネットで見ず知らずの人が一緒にプレイするオンラインゲームの世界では、詐欺やストーカーといった被害をよく聞きます。今回も、容疑者が世間知らずの若い女の子を騙して金を取ろうとしたのではないか」
廣瀬容疑者は、茨城県土浦市の出身。幼い頃に父親を亡くし、姉、弟、妹と母親の5人の母子家庭で育った。中学の同級生によれば、不登校でろくに学校に姿を見せなかったそうだ。
「口数が少なく、何を考えているのか分からないし、粗暴だったので同級生たちは皆、彼に近寄らなかった」
中学卒業後はスーパーの惣菜調理や塗装工、農作業など様々な仕事に従事。事件当時は神栖市のアパートで独り暮らしをしながら鹿嶋市の土木会社に勤務していたが、金に困っている様子で、給料の前借りを申し込むこともあったという。
さらに、廣瀬容疑者には見逃せない前科もある。’17年4月、SNSで知り合った17歳の女子高生に現金を渡す約束をして淫らな行為をしたとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕されていたのだ。
先のライターが言う。
「チームで協力して進めるタイプのゲームなどでは、上級者が初心者を助けるうちに、信頼関係や主従関係が生まれるケースもあります。会社でも、ベテラン社員が新入社員を指導しているうちに隷属的な人間関係に陥ってしまうことがありますよね。一種の洗脳状態とも言えます。仮に、2人がオンラインゲームの世界でそのような関係性になっていたとすれば、目隠しをされたり、金を要求されて従ってしまったとしても不思議ではありません」
被害者の菊池さんは栃木県栃木市生まれで、父母と弟の4人暮らし。小学校の卒業文集に「外科医になって多くの人を助けたい」と書いたほどで、県立高校の通信課程から薬科大学に進学。医療の仕事に携わりたいという子どもの頃からの夢に向かって最初の一歩を歩み出したばかりだった。
「幼い頃から弟と手を繋いで出掛けるなど、仲のよい一家でした。おとなしいけど、しっかりと挨拶もできる礼儀正しい子でしたよ」(実家の近隣住民)
彼女の素直で優しい性格がアダとなったのか。