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蝶野正洋の黒の履歴書 ★『半沢直樹』とプロレスの共通点

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提供:週刊実話

 俺はあんまりテレビドラマは見ないほうなんだけど、『半沢直樹』は毎週見ている。ストーリーも面白いし、俳優陣もすごい演技をみせてくれるから、思わず引き込まれてしまうんだよ。

 中学1年生の息子もハマっていて、慣れない銀行用語を調べながら食い入るように見ている。ただ、妻のマルティーナは「この人たちは、なんでこんなに顔を近づけ合って、大声でわめき合ってるの? 全然リアルじゃない」って不思議な顔をしている。

 だから俺は「これは時代劇なんだよ」って説明した。それに「歌舞伎役者が多くキャスティングされていて、彼らは表情を大きく使った演技が得意なんだ」という解説も加えてね。確かに海外の人からみたら『半沢直樹』の世界は異様に映るかもしれないよな(笑)。

『半沢直樹』が痛快なのは、悪役を際立たせてるからだよね。憎々しい敵がいるからこそ、半沢の「倍返し」がカタルシスになって、視聴者の溜飲を下げる。これ、やってることはプロレスのマイクパフォーマンスと一緒だよ。半沢たちが大見得を切って、力強いセリフを叫ぶからスカッとする。

 それにしても『半沢直樹』の悪役たちを見てると、俺のヒールとしての血が騒ぐ。もし、また続編を作るときがあれば、俺を悪役としてキャスティングしてほしい。

 あと、このドラマにはいまを生きる社会人へのメッセージや、現場で働く人たちへのエールが込められているとも思う。経営陣の怠慢で潰れそうな組織を、現場の力で立て直すという物語は、コロナ禍のいまだからこそ響くんじゃないかな。たまたま放送時期がこういうタイミングになっただけかもしれないけど、社会で踏ん張って働く、しっかりした大人たちをちゃんと描いているのがポイントだよね。

 先日お亡くなりになった渡哲也さんも、しっかりした頼れる大人というイメージだった。先頭に立って人を率いることも、下から支えることもできる、本物のリーダーだったと思う。

 渡さんと縁のあった方々のコメントをみても、世話になった方々にお礼を欠かさなかったとか、たまたま同じ店に居合わせただけなのにそっと先に勘定してくれていた、みたいなエピソードがたくさん出てくる。こういう人になりたいなって思わせてくれるよね。

 プロレス界でも、一緒にメシを食ったときなんかは、先輩が後輩の分を出す、という慣習はある。だけど難しいのが、プロレス界は年功序列ではなくて、年下でもトップを取ってるレスラーがギャラを多くもらってるということがよくある。俺がヒロ(斎藤)さんと天山(広吉)選手で「狼軍団」を組んでた頃、3人でメシを食いにいくと、キャリアでいえばヒロさんが一番上なんでいつも出してもらってた。

 ただ、実際には天山や俺のほうが稼いでるという時期もあったから、3人で食事をするときは割り勘にしようって決めた。

 そこでずる賢かったのが天山なんだよ。2人のときは年上が払うという慣例が残ってたから、天山は俺かヒロさんか、1人のときを見計らって誘ってくるようになったんだよ(笑)。

 社会では天山のような要領も必要なんだよ。天山も悪い先輩の俺に要領よく立ち回る後輩役で、『半沢直樹』に出演させてほしいな。

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1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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