こう語るのは防災ジャーナリストの渡辺実氏である。
不甲斐ない宰相を頂く国民には不幸なことだが、大地震急襲という不足の事態は刻一刻と迫りつつある。
まず6月4日、神奈川・横須賀市など三浦半島の中心部で異臭をめぐる通報が多数発生した。その後、7月17日にも横須賀や久里浜周辺で「海の方からガス臭がする」という通報が寄せられた。三浦半島の地下深くのガス田から漏れたと見られる。臭いニオイについての原因は今もって不明のままだ。
首都直下大地震は差し迫っているのか、それともまだ先なのか。
武蔵野学院大学特任教授(地震学者)の島村英紀氏が言う。
「横須賀などの異臭騒ぎは大地震の前兆現象です。フィリピン海プレートは活性化しているうえ、太平洋プレートも日本列島にプレッシャーをかけ続けている。エネルギーが溜まっていることだけは確かです。首都直下地震が迫っていることは明らかですが、いつになるかは、今の地震学では分かりませんね」
地震学の限界を示唆する島村氏は「いつ発生しても大丈夫なように行動してほしい」と警告した。
首都直下大地震でよく知られるのが、1855年11月に発生した安政江戸地震(M6.9、最大震度6、死者約4000人)と、1894年6月に襲った明治東京地震(M7.0、最大震度6、死者31人)だ。一極集中が進んだ現在の東京と100年以上前とでは単純に比較できないが、死者、倒壊などの被害は桁外れに大きくなるに違いない。
ともあれ、首都直下大地震後、連鎖するのが富士山噴火である。
「東日本大震災を思い出してください。大震災の4日後に発生したのが、静岡・富士宮市を襲った震度6強の激しい揺れです。震源は南西斜面の地下15㎞で、富士山直下型地震です。東海、中部、関東地方の広域を揺らした震源域は、まさに富士山のマグマ溜まりの上部だった」(島村氏)
この後、富士山では、南麓と南西麓にあたる富士宮市各地で大量の地下水が民家の庭先や道路脇、田畑などに湧き出すなどの異変が相次いだ。そして、マグマ上昇の熱で富士山5合目以上の斜面下に広がる永久凍土層が溶けた。そればかりか、樹海のあちこちに潜む溶岩洞窟内部の天然氷が急激に溶けて小さくなったのだ。
それもこれも、富士山の火山活動による地温の上昇が原因とみられている。東日本大震災の震源である宮城県沖からは、300㎞以上も離れた富士山がこうも多大な影響を受けるとは…。
「わずか95㎞しか離れていない東京で大震災があれば、富士山への影響は免れないと思いますね。実は、マグマ溜まりの天井が東日本大震災によって落ちたという仮説を唱える学者もいましてね。次の首都直下地震が、富士山噴火を誘発する可能性は大いにあると思います」(島村氏)
さらに、気掛かりなのは西之島の活発な成長である。2013年11月に小笠原諸島の西之島の東南東500メートルに出現した火山島は、その後、幾度かの休止期を挟みながら噴火が続き、今や旧島を飲み込んでしまった。
一連の活動で噴出したマグマの総量は、日本史上最大規模と言われる富士山の貞観大噴火(864年〜866年)、宝永大噴火(1707年)、鹿児島・桜島の大正大噴火(1914年)をはるかに上回っているという。
「富士山も西之島も同じ火山群に属している。そう考えると、富士山の大噴火を引き起こしても不思議ではありません」(島村氏)
感染拡大する新型コロナ禍でさえ、果断な政治判断ができない安倍政権にとって、コロナ禍、巨大地震、富士山噴火という複合災害が重なった場合、適切な舵取りなどできるわけがない。
「富士山が噴火したら、首都圏でも数センチから10数センチの火山灰が積もり、交通機関やライフラインなどに影響が出る。そうなったら、今でさえ、一杯いっぱいの政権にとって、対応できない恐れがあると思いますね」(渡辺氏)
政界では“ポスト安倍”の政局や既得権益などの権力争いに明け暮れ、国民生活は2の次、3の次だ。ましてや、激甚自然災害対策に手が回るはずもない。
これから日本列島は台風シーズンに突入する。近年、台風は過去に例を見ないような降水量と暴風で甚大な被害をもたらしているのはご存知の通り。
「8月は台風発生数が1年で一番多い月です。しかし、上空の風がまだ弱いため、発生した台風は不安定な経路をとることが多い。それが8月末以降になると、南海上から放物線を描くように日本付近を通過する。昨年のように関東を直撃する台風は十分警戒しなければなりません」(社会部記者)
最悪、新型コロナ第2波、大地震、富士山噴火、台風直撃の4重苦が同時に襲えばどうなるか。
「阿鼻叫喚の惨状が繰り広げられないよう、祈るばかりです」(渡辺氏)
4つの災難に備えたほうがいい。