支持基盤の日本労働組合総連合会(連合)は合流新党支援と“玉木A級戦犯”を表明したことから、多くの国民議員が新党に雪崩を打つ気配だ。
玉木代表率いる一派は「数人規模」(政界関係者)という噂が飛び交う始末。しかし、玉木代表は周囲に「開けてビックリ玉木箱」とうそぶき、余裕綽々だという。
まずは、全国紙政治部記者が立民と国民の合流経緯を振り返る。
「もともと、2党は同じ民進党(旧民主党)で同じ釜の飯を食べてきた間柄だ。それだけに分裂後の憎しみは相当、根深い。遅々として合流が進まなかった理由です」
民進党の分裂劇はこうだ。2017年10月の総選挙前に人気絶頂だった小池百合子都知事は国政進出を狙い『希望の党』を結成した。当時の民進党・前原誠司代表は解党し『希望の党』に合流、政権奪取を図ろうとしたが、小池氏が民進党の一部左派系議員を排除しようとして大失速する。結果、排除された側の枝野幸男氏が創設した立民は選挙で大躍進、野党第一党の地位を得た。
政局が読めないことでは定評のある前原氏が『希望の党』へ合流した流れを汲むのが国民民主党だ。
「今秋の解散総選挙説が飛び交い出すと、野党がバラバラではボロ負けするとして、大同団結の動きが加速した」(同)
現在、立民は衆院56人、参院33人の計89人。国民は衆院40人、参院22人の計62人だ。このうち国民議員の当落の可否を握る連合は合流を猛プッシュする。
「合流新党に参加しない議員は次の選挙で支援しない、と連合は半ば恫喝気味な意向を示している。そのためパナソニック労組から支援を受ける国民の平野博文幹事長を筆頭に衆院議員約30人、参院議員も半数以上が新党に参加するでしょう。ここに野田佳彦前首相らが率いる無所属グループの20人が加わり、150人前後の一大勢力になる可能性が高い」(同)
なぜ、玉木代表は分党に舵を切ったのか。
「当初、合流を望んだのは国民の玉木代表だった。だが、協議が始まると、完全に連合を味方につけた立民ペース。流れは新代表も新党名も立民の言うがまま。悪くてもナンバー2の座を狙っていた玉木代表は猛反発し、合流はOKだが、自らは非合流の分党方式を選択したのです。玉木代表が合流しない理由の基本政策の違い云々は、あとで付け足したようなもの。蛇足ですよ」(野党関係者)
今後の焦点は(1)国民民主が保有する約100億円のカネの争奪戦(2)玉木派の数(3)玉木代表の身の処し方だ。
1つ目、分党した場合の100億円争奪戦。
「議員数でこそ立民が多いが、2020年の政党助成金支払い予測では国民が約46億、立民が約43億で国民が上回る。これは民進を継承した国民と一から新党を立ち上げた政党助成金計算手法の差だ。これに加え、国民には旧民主時代からの約50億が金庫に眠っているとされる。立民が合流を急いだのも、多くの候補者擁立にはカネがかかるため、国民の貯蓄を根こそぎ吸収したいからです」(国民民主党関係者)
玉木代表にすれば、トップの座を奪われた揚げ句、カネまで…となれば、まさに泣きっ面に蜂。事実上の立民の国民吸収合併にメリットは何もない。
「危機を察知した玉木代表は途中から一部幹部らと極秘の動きを強めた。それが分党方式だった。分党なら非合流組が民進党時代から引き継ぐ虎の子の50億円を死守できますしね」(同)
橋下&吉村トライアングル
2つ目の玉木派の顔ぶれだ。玉木代表と行動を共にするのは、前原誠司元外相、古川元久代表代行ら。
「“言うだけ番長”の前原氏は、玉木代表の分党を高く評価している。また、最近、立民と袂を分かった山尾志桜里衆院議員も玉木代表について行くしか道はない。さらに、増子輝彦元幹事長代行らも玉木代表について行くでしょう。玉木派の数は多くて10数人といったところでは」(同)
3つ目、玉木代表に秘策はあるのか。玉木代表に近いとされる維新関係者がこう明かす。
「玉木氏は憲法改正と地方分権で政策が合致する維新との連携を模索している。視線の先には将来、国政に転じる維新の吉村洋文大阪府知事、維新創業者の橋下徹元大阪市長のトライアングルがある。ウチの松井一郎代表は今回の新党合流劇を『選挙が近いのでカネの確保を最優先した。浅ましい』と猛批判している。だから玉木氏は立民と合流しなかったのです」
前原元外相は片山虎之助・日本維新の会共同代表らと地方分権の勉強会を立ち上げた。
「自民とも玉木氏は憲法改正で合致している。自民は玉木一派に選挙協力で報いる腹だ。パイプ役はかつての同志、二階派特別会員の細野豪志と二階派の長島昭久です」(自民党関係者)
玉木代表側近はこんな秘策も漏らす。
「かつて『希望の党』で失敗した小池都知事とも極秘に会い、意見交換している。今後、再連携もある」
政治の師と仰いだ小沢一郎氏は立民合流を支持しており、玉木一派は「政界再編で埋もれる」と見られている。果たして、政局が読めないのは誰か。