「自主トレをやり直しているようなもの。例年以上に練習する時間があるので、レベルアップにつながれば」(プロ野球解説者)
巨人の自主練習は、2勤1休。ベテランも多いチームなので、「何をすべきか」はコーチに指示されなくても分かっている。若手もそれに触発され、相当量のバットを振っている。ファールを意図的に打つ調整法(=技術)も、通常のシーズン中では「試合優先」となって、学ぶことができなかっただろう。
対照的とも言える情報が、広島方面から聞こえてきた。
「カープ投手陣がマツダスタジアムのスタンドで階段ダッシュを実施しました。練習開始から約10分、全員、無口になっていきました」(スポーツ紙記者)
技術か、体力か…。プロ野球選手にとってどちらも大切だが、そもそも、今年のプロ野球ペナントレースはウイルス禍がなくても変則で行われる予定だった。東京五輪の開催期間中、いったん中断となるため、例年よりも約1週間早く開幕する日程だった。そのため、キャンプ序盤の「基礎体力のアップ」を図る練習は省略され、どの球団もキャンプ中盤から行う実戦形式の練習からスタートした。
「自主トレ期間中に、各選手が体力アップをしっかりやっていたはず」(前出・同)
しかし、オープン戦中盤でのこと。年長のプロ野球解説者たちは、登板する各投手が打ち込まれるたびに、「下半身ができていない」と嘆いていた。走り込み量の不足だ。
「ひと昔前、キャンプでトータル3000球を投げるのは当たり前でした。投げ込みの数が多ければ良いという意味ではないが、『先発、中継ぎ、クローザー』と完全分業制が定着したからか、先発投手は端から完投しようという意識がないみたい」(ベテラン記者)
広島投手陣の階段ダッシュは、ウイルス禍で長引く自主トレの“ダラダラ感”に喝を入れる意味もあったのかもしれない。
巨人の自主トレについて、関係者がこう説明する。
「阿部二軍監督がグラウンドに入ると、雰囲気が一変します。緊張感が出て、選手も手抜きができなくなります」
阿部二軍監督は現役晩年、自主トレで同行した選手たちを指導していた。シーズン中も昼過ぎには球場入りし、黙々とティー打撃を行い、それにつられるように他選手たちも早出の練習を自らに課していた。
走り込み量が少ないということは、スタミナ不足を意味する。体力不足が故障につながられなければいいのだが…。阿部二軍監督の指導により、新しい技術を習得しようとすれば、自ずと練習量も増えていく。阿部二軍監督の狙いはそこにあったのかもしれない。変則的となる今季のペナントレースのカギは「故障者を出さない」ということになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)