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本好きのリビドー

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提供:週刊実話

 悦楽の1冊『日弁連という病』ケント・ギルバート/北村晴男 育鵬社刊 1400円(本体価格)

★日米弁護士コンビが怒りの告発

 むかし芸人は河原コ○キだった。当今の報道番組でいっぱしコメントを曰える身分では、勿論、元々ない。新聞記者は明治の頃は羽織ゴロと呼ばれ忌み嫌われた。他人(主に著名人や富豪)の私生活を詮索してどこの誰には妾が何人いるだの、醜聞をわざわざ探し歩いて書き立てたからで、今日、大学で客員教授を務めたりなど考えられなかった。時を距ててそこまで“出世”したわけだ。

 同様に弁護士も代言人と称したかつては、“三百代言”なる死語に象徴されるごとく、口先三寸で世を渡る胡乱な職業と見做され、只今、一般に流布する一応その仕事に対する社会的信頼の高さなど、当時はおよそ想像もつかなかったはず。だが、往時に比べ遥かにステータスは高まったとはいえ、その素性や行状に甚だ疑問符を呈さざるを得ぬ不埒な曲者があとを絶たないのもまた事実。

 国連にまで出向いて慰安婦問題で日本の国際的名誉を毀損するのに嬉々として励む輩や、日頃狂ったように人権を振りかざしながら、北朝鮮による拉致事件や犯罪被害者の心情には平気で頬被りを決め込む輩など枚挙に暇がない。その手の連中が識者面して世論形成をリードしようと企むのも言語道断だが、それらの集大成が折に触れて公表される日弁連=日本弁護士連合会による「声明」の数々だろう。

 死刑制度の存置に、憲法改正に、首相の靖国神社参拝に、そして、あからさまに半島の独裁国家への忠誠を生徒に誓わせ、日本への敵意と憎悪を煽る教育を行う学校への補助金停止にも、一貫して反対し続ける背景にあるものとは何なのか、日米双方の視点で考える本書。アメリカ型の訴訟社会になるのは御免だが、政治的に著しく偏向した集団に弁護士団体が牛耳られてないだけ米国の方がましなのは残念。_(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 渋谷は「若者の街」であり、最近もコロナ騒ぎの中、若者が外出自粛要請を無視して自由に闊歩していると報道されたばかりだ。だが、道玄坂の表通りから一歩入ると、別の顔を持つ界隈に出くわす。都内有数のラブホテル街として知られる円山町だ。

『東京の異界渋谷円山町』(新潮社/税込649円)は、作家の本橋信宏氏によるこの街のディープなルポ。同所の成立や歴史の解説、ここで生きてきた風俗店の店主らへの取材を通じ、東京の昭和史の一面をつぶさに炙り出した力作だ。

 円山町といえば、東電OL殺人事件を思い出す方も多いだろう。昼は大企業に勤める才媛、夜は裏通りで客を引く娼婦という、際立った二面性を持つ女性が殺害されたのが円山町だった。

 著者の本橋氏も、被害者の心理がどうしても分からず、現場を足で歩いて振り返ることからルポを開始したという。同氏はそこで、円山町が人を引きつける得体の知れない“磁場”を持つ空間であることに気付く。

 さらに明治から昭和の時代は料亭と芸者が集い、多くの軍人や政治家が足繁く通う花街だったという成り立ち、バブル経済期以降はラブホ街として活況を呈し、多くのホテルが軒を連ねるに至る歴史が綴られる。

 風俗産業が規制され、一部は若者向けに様変わりした今も、デリヘルやヘルスなど風俗店がしぶとく生き残っている。エロスの匂いと、混沌とした昭和の面影を漂わせる異界の実像を伝える1冊。『迷宮の花街 渋谷円山町』改題。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

【話題の1冊】著者インタビュー 鈴木智彦 ヤクザときどきピアノ CCCメディアハウス 1,500円(本体価格)

★ぶつかってもスピンしてもアクセルを踏み続ける

 著者は常にヤクザを追ってきた。東日本大震災によって被災した福島第一原発に作業員として潜入し、裏社会との密接な関係をあぶり出した『ヤクザと原発』(文藝春秋刊)、闇の巨大資金源と化した“密漁ビジネス”を5年にわたって追い、食品業界のタブーを暴いた『サカナとヤクザ』(小学館刊)など生々しい真実を伝え続けてきた。その著者が52歳にして新たに挑んだのは、なぜかピアノ。興奮、緊張、焦り、そして感動!? ヤクザとは相容れない世界での奮闘ぶりを聞いた。

※ ※ ※

――「運命の人」と書かれたピアノ講師のレイコ先生は、鈴木さんの“職種”を知っていたのですか?
「ピアノの世界って、体育会系に近いものがあるんです。抗争事件が起きてレッスンに行けなくなったとき、LINEで水鉄砲のマークを送ってました。毎週水曜日がレッスンで、昨年11月に神戸山口組の幹部が射殺されたのも水曜日でした。12月の発表会が迫っていて、本当なら仕上がっている時期なのに。そのときも、レイコ先生に鉄砲マークをLINEして、《了解》と返信がきましたね。でも、レイコ先生は美人です。例えるなら“お蝶婦人”みたいな。勝手に独身だと思っていて、妊娠したと聞いたときはショックだった」

――発表会の直前に聞かされたそうですが、肝心の大舞台はどうでしたか?
「何も覚えてない! レイコ先生の前では下手な自分も見せていて素っ裸の状態だから、弾いているところを見られても止まらずにいられたけど、他の人に見られると引っ掛かる。それなのに、発表会には担当編集たちだけじゃなく、ファンと思われるカップルまで来てまして。1人2500円も払うのにですよ。出番前に弾いたおじいさんたちが、みんな見事に失敗していて、屍が累々と積み重なっていたし、ピアノの前に座った瞬間、もう周りは見えなくなりました。ガラスのケースの中に入ったような感じ。
 100回弾いて99回を間違えずに弾けるようにしないと、本番では失敗する。レイコ先生からは『事故は絶対に起きる』と言われていました。間違っても始めからやり直したりはしない、ぶつかってもスピンしてもアクセルを踏み続ける。それが発表会の評価だと。結果は、見事に数小節をすっ飛ばしました」

――出版記念コンサートの話もあるようですが?
「レイコ先生以外の人の前ではテンパるから、絶対にやりたくないです。けど、準備はしています。『ダンシング・クイーン』しか弾けないから、コンサートってどうすればいいのか…」
 著書には、読者特典として発表会の動画配信(5月30日まで)があり、ヤクザ取材とはひと味違った鈴木氏の“勇姿”が拝める!

鈴木智彦(すずき・ともひこ)
1966年生まれ、北海道出身。『実話時代BULL』の編集長を経て、フリーのカメラマン兼ライターになる。ヤクザ業界を中心に取材を続け、各誌にて執筆。趣味は料理と自転車。

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