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六代目山口組vs神戸山口組 闇に包まれた“指示役”の存在

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提供:週刊実話

 六代目山口組(司忍組長)と神戸山口組(井上邦雄組長)が今年1月に特定抗争指定を受け、2月に三重県桑名市の六代目側・髙山清司若頭の自宅に銃弾が撃ち込まれて以降、両山口組の間では不穏な沈黙が続いている。全国的に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したことを受け、一時的な“休戦状態”にあるとの見方もされたが、抗争自体が沈静化したわけではない。

「緊急事態宣言まで発令され、日本が危機に直面している状況で事件など起こせば、余計に混乱を招きかねない。ただ、事が起きる可能性もゼロではないだろう。新型コロナの問題が長引くようなら、戦局にも影響を及ぼしかねないからね」(他団体幹部)

 特定抗争指定を受けるに至った“報復の連鎖”も、予期せぬ状況で起きてきた。始まりは神戸側・五代目山健組(中田浩司組長=兵庫神戸)の與則和若頭が刺された事件で、天皇陛下の退位直前に発生。その後、三代目弘道会(竹内照明会長=愛知)系組員銃撃、山健組系組員射殺事件が起き、追撃するかのように神戸側の古川恵一幹部が射殺された。

 すべて昨年に兵庫県下で起きており、それぞれ神戸地裁で、今年には初公判が開かれると思われていた。しかし、この4事件が社会に与えた衝撃は大きく、裁判にも反映されていたのだ。

「4件に関して、殺人未遂や殺人などの罪で計5人を起訴した神戸地検が、裁判員裁判の対象から除外するよう、神戸地裁に請求していたことが明らかになりました。理由は『事件の関係者が裁判員に危害を加え、公判に悪影響が出る恐れがある』としています。

 確かに、九州にある独立団体の組幹部が殺人未遂に問われた裁判では、知人の男が裁判員に声を掛けたことが問題視されました。裁判員側が辞任を申し入れた背景には、組織への恐怖心があったのでしょう。それを思えば、今回の神戸地検の要請は当然といえます」(全国紙社会部記者)

 しかも、4事件に関しては、発生当初から共犯者の存在、もしくは組織的な犯行の線も囁かれた。それだけに、山口組分裂の根深さが浮かび上がってきたのだ。

 まず、昨年4月18日に山健組・與若頭が襲撃された事件から振り返る。同日午前0時5分ごろ、神戸市中央区の春日野道商店街を女性と一緒に歩いていたところ、あとをつけていた男が近づき、手提げ鞄から包丁を取り出して與若頭の臀部に突き刺した。與若頭が振り返ると、さらに男は正面から肩部分を切り付けて逃走。商店街を横切る道路に出たところで、タイミングを図ったかのように乗用車が止まり、男は後部座席に乗り込んだのである。

 事件から約1時間後、六代目山口組・弘道会の野内正博統括委員長(現・若頭)率いる野内組傘下二代目北村組の中村(本名・呉)光弘組員と堀田幸弘組員が所轄署に出頭。市内のコインパーキングに駐車されていた逃走車両からは、犯行に使われた刃渡り21・4センチの包丁が見つかった。

 2人は殺人未遂と銃刀法違反の容疑で逮捕、起訴されたが、実行役の中村組員は「刺したのは間違いないが、殺すつもりはなかった」などと殺意を否認。堀田組員に至っては「車を運転していただけで、(中村組員が)刺すとは思わなかった」と供述したという。

「堀田組員は事前に犯行を知らされていなかったのか、逮捕時から共謀を否認していました。それもあって、裁判の前に行われる手続きが長引き、事件から丸1年経っても公判が始まっていないのです。公判自体、検察側と弁護側が殺意の有無と共謀関係を巡り、激しく争うことが予想されています」(全国紙社会部記者)

★山健組トップ逮捕の根拠

 この事件の不可解な点は、中村組員が犯行に及んだ動機だった。

「弘道会側が仕掛けたいうのが大方の見方やったが、北村組は任侠山口組(現・絆會)から野内組に移籍した組織や。織田絆誠会長が神戸長田で山健組系組員に狙われた際、射殺されたガード組員が北村組に所属しとったんや。その仇を取りに行ったいうのが動機らしいが、與若頭を襲撃したのは野内組に参画してから半年以上も経ったあとやで。返しにしては不自然で、当局は組織性も疑ったはずや」(ベテラン記者)

 與若頭襲撃から約4カ月後、弘道会への報復攻撃が行われた。昨年8月21日の午後6時15分ごろ、JR新神戸駅にほど近い弘道会の“神戸拠点”で、弘道会傘下組織に所属する加賀谷保組員が、至近距離から複数発の銃弾を浴びたのだ。

 加賀谷組員は軽自動車に乗っていたが、腹や腕など3カ所に被弾し、右腕を切断する手術を受けるほどの重傷だった。事件から間もなく、兵庫県警は犯行や逃走に使用された可能性のあるバイク2台を押収。現場周辺の防犯カメラなどの映像を集めて解析するなどして、山健組の犯行に絞って捜査を進めていたという。

 その結果、事件から3カ月半後の昨年12月3日、殺人未遂と銃刀法違反容疑で、神戸山口組若頭代行を務める山健組の中田組長が逮捕されたのだ。

 五代目山口組・渡辺芳則組長の出身母体である山健組のトップが、ヒットマンとして犯行に及んだという前代未聞の事態に、業界内外は騒然となった。逮捕後、中田組長は黙秘を貫きながらも起訴された。

「今年1月5日に開かれた山健組の会合で、『必ず帰ってくる』いう中田組長のメッセージが、全直参に伝えられたそうや。潔白を訴えたかったのやろうから、裁判では一貫して無罪を主張するはずや」(同)

 また、中田組長にバイクを提供したとして山健組傘下組員ら4人も殺人未遂容疑で逮捕されたが、処分保留になったのち不起訴処分となっている。

「逃走に使ったバイクが中田組長宅近くの病院駐車場で発見され、付近の防犯カメラの映像には事件後、自宅方向に歩いて行く犯人に酷似した男が映っていたというのです。兵庫県警が外部の研究機関に鑑定を依頼し、『中田組長本人の可能性が高い』との回答を得たそうです。しかし、犯行の瞬間はフルフェースのヘルメットを被っており、誰だか分からない状態ですから、公判を維持するのは難しいと思います。検察側は何か“隠し玉”を持っているのではないでしょうか」(前出・全国紙社会部記者)

 この弘道会“神戸拠点”には髙山若頭の別宅が隣接していたため、事件を起こして使用禁止に持ち込むことが、本来の目的だったとも囁かれた。実際、弘道会側の凄まじい怒りを誘発したといえる。

 報復とみられる事件は、髙山若頭の出所前後に相次いで発生。昨年10月10日に、山健組系組員2名が弘道会傘下の十代目稲葉地一家に所属する丸山俊夫幹部に射殺された。出所後の11月27日には、六代目山口組に所属した過去を持つ朝比奈久徳元組員によって、古川幹部が命を奪われたのだ。

 丸山幹部は「フリーの記者」を名乗って、本誌カメラマンらが立つ山健組定例会の取材現場に紛れ込み、ほぼ出席者が引き揚げた午後2時ごろ、犯行に及んだ。拳銃2丁と実弾11発を所持しており、「1人でやった。当初は幹部を狙っていたが、職務質問された際、組員が近寄って来たので撃った」などと供述したという。
「狙っていた幹部いうのが、中田組長やった可能性がある。当時、中田組長は神戸山口組の定例会などにも姿を見せず、消息不明やったから」(前出・ベテラン記者)

★M16自動小銃の入手経路

 当初から組織的犯行の線が浮上したが、組織上位者への突き上げ捜査はなく、丸山幹部単独で起訴された。

「拳銃や高額なカメラを、丸山幹部自身が用意したとは思えん。けど、指示系統が解明されとらん以上、裁判で検察側は『組織上位の氏名不詳者と共謀』とするしかないやろな」(同)

 この事件の翌日、抗争激化を懸念した兵庫県警は暴対法に基づき、両山口組の本部などに使用制限の仮命令を出して活動を規制。だが、さらに規制を強化した特定抗争指定の引き金となったのは、尼崎市で起きた古川幹部射殺事件だった。

 当日の午後5時5分ごろ、尼崎市内の親族が経営する飲食店の前で、古川幹部に向けて朝比奈元組員が自動小銃を発砲。頭や胸、腹を撃たれ、古川幹部は即死した。犯行から約1時間後に、朝比奈元組員は京都市内で発見され、銃刀法違反などの容疑で現行犯逮捕。「30発ぐらい撃った。京都に向かったのは神戸山口組幹部(髙橋久雄・雄成会会長)を襲撃するため」と供述したという。実際、過去に複数回、下見しており、今年2月には髙橋幹部に対する殺人予備容疑でも逮捕、起訴された。

「犯行の1年前に、二代目竹中組(安東美樹組長=兵庫姫路)を破門されとるが、“偽装破門”の可能性も指摘され、県警は竹中組本部にガサを掛けとる。何より、犯行に使われたM16自動小銃は簡単に入手できる代物やないで。せやから、組織性も疑われたんや。裁判で検察側が指示役の存在に触れるかもしれんが、逮捕にすら至っとらんから、事件の全容解明は難しいやろな」(関西の組織関係者)

 山口組が分裂した直後の平成27年10月6日には、神戸側に移籍したとされる組員が長野県で射殺され、初めての死者が出た。翌年5月31日には、神戸側の池田組(池田孝志組長)若頭が岡山県で弘道会系ヒットマンによって射殺され、1カ月半後の7月15日、今度は弘道会の本拠地である名古屋で山健組の元関係者が別の弘道会系組員らに撃たれて死亡。さらに、10月9日には和歌山県で、四代目倉本組(津田力組長)系組長らによって山健組直参が撲殺される事件も発生した。

 岡山での射殺事件は共犯者の存在が疑われながらも明らかにされず、名古屋射殺事件では現場にいた実行犯以外の鍵を握る2人が、公判前に脳出血で死亡。両事件とも、謎を残したまま実行犯の刑が確定したのだ。

 また、神戸山口組が分裂したことによって、山健組傘下の黒木(本名・菱川)龍己組員がヒットマンとなり、任侠山口組系組員を射殺。遺恨が遺恨を生んだ。

 これまでに100件以上もの対立事件が起き、10人近い死者が出た六代目側と神戸側の抗争は、いずれ決着という最終局面を迎える。そのとき、新たな血が流れることになるのか。静かに緊張が高まっている。

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