取材の前日、2人はそれぞれにビッグマッチを行っていた。雪妃は、アイスリボンのシングル王座4度目の防衛戦、安納は超プラズマ爆破マッチという大変な試合をしてきたのだ。試合の興奮さめやらぬままのインタビューとなった。
プラズマ爆破と選手会長辞任!
――まずは安納さん、爆破マッチで怪我はなかったですか?
安納 腕をちょっと火傷しましたけど大丈夫です。でも、プラズマ爆破ってすごいんですよ。爆発した途端に体がすっ飛びましたから。タッグを組んだ尾崎魔弓さんは、燃えちゃってましたからね。
――すさまじい試合だったようですね。
安納 対戦相手はアジャコングさんと松本浩代さんで、アジャさんには場外で頭から垂直に落とされて、頭の中で天使が舞いましたよ。リングでも何度も投げられて、一斗缶も顔面で受けちゃって。でも、私もアジャさんの頭をバットでぶち抜こうとしましたけどね(笑)。
――怖くなかったですか?
安納 初めてだったんですけど、試合前は恐怖よりワクワク感しかなかったです。やってみて逆に火がつきましたね、爆破だけに(笑)。今回負けちゃったけど、次は絶対やってやるって思いました。
――ところで、安納さんは所属していたアクトレス・ガールズを辞めて、今年からフリーになったんですよね。
安納 今までは団体の中にいましたけど、今後は安納サオリ自身を見てもらいたいですね。プレッシャーが好きなんで「それ以上のものをやってやるよ!」という思いです。
――ずいぶん思い切りましたよね。
安納 悩みました。ベルトも締めているし、一応、トップと言われてましたから。プロレスラーになれたのもアクトレスのおかげですが、でも、さらに自分自身を高めるために外に出ました。
――だいぶ引き止められたんじゃないですか?
安納 いえ、私、人望ないんで(笑)。団体での最後の興行は、おかげさまで超満員で、仲間も皆、泣いてくれて。でも、私は引退するわけではないので、一切泣きませんでした。
――これからが新しい出発ですからね。フリーになって行動範囲が広がりましたか?
安納 もっと広げていきたいです! プロレスだけでなく、いろいろな所で安納サオリを見せていきたい。今年はプロレスを知らない人たちまで、私に一目惚れさせるのが目標の一つです。
――次に雪妃さんですが、昨日は後楽園ホールのメインで王座防衛戦でした。
雪妃 はい、防衛しました。だけど、防衛した後に波乱を起こしてきたんです。
――えっ! 何があったんですか?
雪妃 思いの丈をぶちかましたんです。今年、私の所属するアイスリボンは、リボーン(再生)の年ということで、8月には横浜文化体育館でビッグマッチがあります。そして、地方の興行も奮起してやらなければいけない。だから、現状維持は許されないんです。
でも、くすぶっていて、表現しない、モチベーションが低い人がいる。1年半、シングル王座を目指して、戴冠して、防衛して、と闘ってきたけど、景色に変化がなくなって。あー、このままじゃ面白くないなと。私が面白くないと思うのだから、見に来てくれるお客様もそうかもしれないって。
アイスリボンは“プロレスでハッピー!”が合言葉なんですけど、確かに皆、仲がいいし、居心地もいい。だけど、それで安泰な気でいる。それじゃ、ダメなんです。意識を高めて、変化していかないと。
結局、私が防衛しても何も変わらず、そんな状況が悔しくて、許せなくて、試合後、私は選手会長を辞めて、所属外から参戦してくれている、外敵であるはずの山下りなさんとラム会長に合流すると宣言しました。たぶん、これで仲間から憎まれると思います。
★OZで培われた自由なスタイル
――まわりの反響はどうでした?
雪妃 会場中がどん引きして、選手はシーンと静まり返っていました(笑)。柊くるみが直後に行動を起こして、次のシングル戦に挑戦すると言ってきましたけどね。これで皆が奮起してくれればいいんですけど、このまま変わらなかったら、もっと波乱を起こしてやると思ってます。
――2人の場合、現状を打破して上を目指していくという考えは一緒ですね。
雪妃 2人ともタッグでは息が合わないんですけどね(笑)。それでもタッグでベルト、取ったよね。
安納 あっ、でも今日ここ来るのに、2人して電車乗り間違えてます。珍しく息が合った(笑)。
――2人は、OZアカデミーの尾崎魔弓さん率いるヒール軍団「正危軍」メンバーですが、その存在は大きいですか?
雪妃 OZの存在がなかったら、今の自分はいなかったかもしれません。プロレスラーとしてすごく伸び悩んでいた時期に、尾崎さんとシングルで闘った後、正危軍に誘っていただき、尾崎さんから「もっと格好つけて、もっと自由に大胆に表現していいんだよ」と教えていただいて、それから変わりましたね。
昨日の試合でも、対戦相手の藤田あかねの頭に椅子を叩き付けて流血させましたけど、それもOZで培われたものだなと思います。
安納 私もOZの存在は大きいです。アクトレスを辞めるときも真っ先に尾崎さんに報告して、「OZにはこれからも出させてください」とお願いしました。尾崎さんて、存在自体が悔しいくらい格好いいんですよ。
――普段の試合とヒールのときではコスチュームも違いますが、それ以外で違いはありますか?
安納 私はあまり変わらないんですけど、普段の青いコスチュームのときは、やさぐれ女王様で、ヒールの黒いときは、生意気女王様かな(笑)。
雪妃 私は普段の試合では泥くさいですけど、ヒールのときは化粧も濃いですし、大胆にパフォーマンスしています。
私たち2人なら
どこでも行ける
――そんな2人ですが、プライベートは何をしてますか?
安納 私、引きこもりなんで、家にずっといます。掃除したり、料理したり。それと、家でもずっとプロレスを見てますね。男子も女子も、海外の試合もよく見ます。
雪妃 私も料理とかは好きです。あとはたまにお芝居を見に行ったり、友達と食事するくらいかな。
安納 プライベートは地味ですね(笑)。
――2人の存在感は、女子プロレス界きってだと思います。それに2人そろうとものすごくリング映えするので、海外でも受けそうですよね。
安納 海外進出は、私の目標の一つです。これは絶対に実現したいですね。
雪妃 海外は今年の目標でもあります!
――絶対に注目されると思います。
雪妃 息は合わないですけどね(笑)。それとも2人のシングル戦で、海外のあっちこっちを荒らしまくる?
安納 それもいいかも!
雪妃 私が初めて見たプロレスが、アメリカのWWF(WWEの前身)だったんです。だから、漠然と海外で試合したいとずっと思ってました。
安納 私、言ってなかったけど、海外でタッグ組むなら雪さんと思ってました。
雪妃 せっかくプロレスやってきて、痛いままじゃ終われないし、無駄な時間をすごしていられない。今はさらに上を目指していきたいです。そしてこんな選手がいたんだと、何か残したいですね。
安納 私もそう思います!
雪妃 私たちならどこでも行けるな(笑)。
現在、新型コロナウイルスの影響でイベント、興行などが中止を余儀なくされており、プロレスも例外ではない。そんな状況の中、2人から週刊実話読者へメッセージが届いた。
雪妃 世の中も閉塞感に覆われて暗いニュースが多いですが、試合に出るときにはコロナに負けずに、明るく激しく全力で闘いたいですね!
安納 この状況? 負けませんよ。私のキャッチコピーは“絶対不屈彼女”なんで、溜めて溜めて、最高に気持ちいい状態でリングに立ちます!
***************************************
雪妃真矢
アイスリボン所属(OZアカデミーでは雪妃魔矢)。1月9日生まれ。千葉県千葉市出身。身長164㎝、体重57㎏。2014年デビュー。得意技:スノウトーンボム。フェリス女学院卒業後、銀行員からプロレスラーに転身。特技は英語と韓国語。
安納サオ
リフリー。1991年2月1日生まれ。滋賀県大津市出身。身長160㎝、体重56㎏。2015年デビュー。得意技:フィッシャーマンズ・スープレックス、ポテリング、エイトロック。舞台を中心に女優活動をした後、プロレスラーに転身。
2人の近況がツイッターで見られます。 雪妃真矢 @yukihi_maya 安納サオリ @anou_saori