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世界で死者5000万人「スペイン風邪」と新型コロナウイルス

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提供:週刊実話

「新型コロナウイルスに国境はありません。誰でも平等に感染する。だから海外の状況が重要です。海外での流行はどこまで広がっているのか、彼らはどうやって防衛しているのかを知らなければなりません。パンデミックになると、世界中の国々の奥地まで新型コロナウイルスは入り込む。スペインインフルエンザ(1918年)は交通網が未発達だったせいか、世界中の小国まで達するのに2年近くかかりました。僻地だからといって、パンデミックの影響を受けないことはなく、必ず流行する。しかも遅れた分、ウイルスの毒性は強くなっているのです」

“インフルエンザの達人”と言われる元小樽保健所所長で医師&作家の外岡立人氏はそう語る。さらに外岡氏は新型コロナウイルスを「まさに第2のスペイン風邪」と評するのだ。

「当時はまだワクチンなんてありませんでした。スペイン風邪は細菌の一種によって引き起こされるのだろうと考えられていた。当時、小樽で発行されていた新聞を読むと、スペイン風邪で人が亡くなると、旗を立てた馬そりが町を走るんですよ。遺体に近づくと、危ないから外に出るなということです」(外岡氏)

 現在の世界状況を見ると、まさに死屍累々。3月29日に新型コロナ肺炎で亡くなった志村けんさん(享年70)の場合、すぐに荼毘に付された。遺体から感染する恐れがあるからだ。

「スペイン風邪が流行した当時は病院が少なくて、家で亡くなる人が多かった。日本にウイルスが侵入して1年以上も経ってから、当時の北方領土での状況が特派員から報告されている。多くの小さな漁村で一家全員が並ぶようにして死んでいる光景がたくさんあったそうです」(外岡氏)

 日本でスペイン風邪が最初に確認されたのは1918年、台湾に巡業した大相撲の力士団のうち3力士が肺炎などによって死亡したことがきっかけとなっている。同年5月になると、横須賀軍港に停泊中の軍艦に患者が発生し、横須賀市内、横浜市へと広まった。当時、日本の報道ではスペイン風邪は『流行性感冒』と呼ばれていた。

 そして、日本に於けるスペイン風邪の流行は「前流行」と「後流行」の2波に別れるという。

 大正11年(1922年)に内務省衛生局より発行された『流行性感冒』には、スペイン風邪による患者数が報告されている。それによると、1918年8月から1919年7月までの第1回目の流行では、患者数2116万8398名、死亡者数25万7363名、対患者死亡率1・22%。

 1919年8月から1920年7月までの第2回目の流行では、患者数241万2097名、死亡者数12万7666名、対患者死亡率5・29%となっている。1918年12月31日の日本の総人口は5666万7328名(日本帝国人口静態統計1919年)だから第1回目の流行では、全国民の37・3%がスペイン風邪に罹患したことになる。

 第2回目の対患者死亡率が第1回目と比べると大幅に大きくなっている点について『流行性感冒』では次のように分析している。

〈患者数は前流行に比シ約其の10分の1にすぎざるも其の病性は遙に猛烈にして患者に対する死亡率非常に高く3、4月の如きは10%以上に上り全流行を通じて平均5・29%にして前回の約4倍半に当たれり〉

〈流行の当初に於ては患者多発するも死亡率少なく即ち概して病性良なるも、流行の週末に近づき又は次回の流行に於ては患者数少なきも死亡率著しく多く、之を箇々の患者に関し観察するも肺炎等の危険なる合併症は後期に於て之をきすもの多きが如し〉

 当時の人口は約5667万人。総務省統計局によると、今年3月1日現在の人口は1億2595万人だから、単純比較すると、およそ80万人が亡くなったことに相当する。

 世界でスペイン風邪の感染者は5億人、死者5000万人と推計されている。外岡氏が冒頭で指摘しているように、時間の経過とともにウイルスが変異して毒性が強くなり、悲惨な結果を招いているのだ。

「新型コロナも中国・武漢で発生したウイルスと、欧米で爆発感染したものとは変異していると見られている」(テレビ局報道記者)

 外岡氏が続ける。
「ウイルスとの戦いにはアルコールや次亜塩素酸系の消毒薬だけが効く。他に回復者血清、抗インフル薬、抗HIV薬、抗マラリア薬など、他の疾患の特効薬の中にも治療効果がある薬がある。ウイルスは人の細胞内に入って、そこにある遺伝子を間借りして増える。人の細胞に出くわさない限りウイルスは死滅します。新型コロナの病原体ウイルスは、細胞外で勝手に長生きはできない。間違いなく、北半球の大流行はこの盛夏までに収束するでしょう」

 中国の習近平国家主席は「新型コロナウイルスは基本的に抑え込んだ」と宣言。1月23日から実施していた武漢市の封鎖措置を解除し、鉄道や高速道路、空港(国内便)が再開した。

 しかし、無症状の感染者が多数おり、人の移動が正常化するにつれ再流行の不安は残る。外岡氏も再流行の可能性を否定しない。

「新型コロナがスペインインフル並みの感染症だとすると、全世界的に見ても、終息、再流行を繰り返して、徐々に鎮静化に向かうと思います。来年の東京五輪の開催は微妙ですね」

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