この日の試合前、球場入りした原辰徳監督は、待ち構えていた報道陣に対し「昨日は素晴らしい報道にしていただき、ありがとうございました」と言って頭を下げた。前日試合後に公表された、父・原貢氏の死去に対してのものだ。
「貢さんに対するコメントをもらおうとしたのですが、球場では出したくなかったのかもしれません。それよりも、前日の菅野の好投を褒め称え、いつも以上に明るく振る舞っていました」(スポーツ紙記者)
原監督の心中を多くの報道陣が察した。
故・原貢氏(享年79)は1966年に東海大相模高監督に就任し、同校、東海大と、原監督との“親子鷹”でも話題を集めた。アマチュア球界におけるその指導力とカリスマ性は絶大で、孫にあたる菅野智之の巨人入りにも大きな影響をもたらした。
その菅野が5月31日、祖父の死という悲しみを背負い、オリックス・金子千尋と球史に残る投手戦を繰り広げたのだ。
「菅野はこの試合でセ・リーグトップとなる7勝目を挙げた。防御率もマエケン(前田健太)を抑えて堂々の1位。今季は開幕投手の大役も務めた。内海、杉内のベテランがピリッとしませんから、金子との投手戦は菅野が名実ともに新エースに君臨した試合でもありました」(ベテラン記者)
しかしチームの実情は、一枚岩にはなっていないという。菅野は巨人先発陣の中で唯一、好調を維持しているが、それには“カラクリ”があるからだ。
「菅野は“若さ”を武器にしている」(同)
どういう意味かというと、交流戦は通常のペナントレースと違い、3連戦ではなく2連戦となる。そのため、どのチームの先発投手も通常の中6日の登板間隔が狂い、調子を落としてしまう。
「交流戦の間、ずっと中6日なら調整に問題はありません。しかし、登板の度に間隔が違うケースも多く、かなりの負担となるのです」(同)
菅野は“中6日”をほぼ確実に与えられ、24歳の若さもあって、全く疲れを見せないのだ。
「きちんとした登板間隔を与えられているのが、菅野の好調の要因。一方、微妙な登板間隔のズレに苦しんでいるのが、FA移籍してきた大竹寛です。ここ数試合、中盤までに必ず失点するピッチングが続いていますが、その原因は広島時代の古傷である肩痛を気にしているからです。肩の故障歴があるので、大竹は調整も慎重なのですが…」(球界関係者)